『偏見の目をなくしたい』(少年警察ボランティア)

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2024.08.21 その他

社会福祉学部 社会福祉学メジャー 野崎晃生さん

高松中央高等学校出身。
少年の非行防止及び少年の保護を図る少年警察ボランティアの活動に、大学1年生の時から参加している野崎さん。
令和6年度「みんなで子どもを育てる県民運動」推進大会では、その活動が評価され、青少年善行者として顕彰されました。
少しでも少年警察ボランティアの活動を知ってもらいたい、と今回のインタビューで熱い思いを語ってくれました。

少年警察ボランティアに参加しようと思ったのは何故ですか。

 私の祖母が罪を犯した人や非行少年の立ち直りを支援する保護司をしていました。祖母からは、保護司としての活動ややりがい、非行少年たちがどういう環境に置かれているのかという話を聞いていました。彼らが劣悪な家庭環境、虐待、発達障害など、自分ではどうにもできない問題を抱えていることや、自分と近い年齢の人が犯罪行為に手を出していることを知って、私も非行少年のために何かできることがあるのではないか、という思いをずっと持っていました。そして、大学入学後に少年警察ボランティアの募集を目にして、活動したいと思いました。

少年警察ボランティアではどのような活動をしていますか。

 主にマンツーマンでの学習支援活動をしています。夏休みや冬休みなどの長期休暇に私たち学生ボランティアが彼らの課題や宿題をみて、苦手な部分や分からない点について教えています。ただ分からないことを教えるだけではなく、彼らの背景に劣悪な家庭環境があることを思うと、学習支援で私と接することで少しでも心が和らいでもらえたらと思い、できるだけ雑談も交えながらフレンドリーに話すようにしています。
 学習支援活動に取り組む際には、事前に関わる少年に関する趣味や家庭環境、非行の内容などの情報やカウンセリングの結果についての説明を担当職員から受けた上で行っています。関わる時に気を付けていることは、少年が行った行為について本人を前に根掘り葉掘り聞かないようにすること、少年が不快になる言動や態度をとらないことです。そういった行動をとってしまうと、少年が立ち直りに向けた意欲を大きく損なわせてしまう危険があるので、そこを意識して活動に取り組んでいます。
利用している少年たちは小学生から高校生までと幅広いです。私はよく小学生を担当しています。担当する少年たちとの調整は警察職員の方が行うので希望が通るかは分からないのですが、中学校を卒業してから非行に走る少年たちが多いと授業で学んだので、今後は中学生や高校生の少年たちとも関わってみたいです。
 また、年に一度、少年警察ボランティアの研修会があります。基本的に研修会では、今後の大学生ボランティアとしてどういうことをやっていけばいいのか、新規の活動の提案などの話し合いや発表を行っています。私は、研修会という形で新規の活動を提案するのではなく、公の場で今後の活動について話し合う機会を設けてほしいということを伝えました。コロナ禍になって、彼らを取り巻く環境が刻々と変わっているということを報道や統計資料などで知り、やはり彼らの環境が変わっているのであれば支援者である私たち学生ボランティアや警察職員の考え方も変化していかなければならないだろうと思います。そのために、まずは警察職員、大学生ボランティア同士で話し合う場や一緒に活動内容を改善したり、新しい活動を提案したりする機会を設けていく必要性があると思います。

少年警察ボランティアについて、野崎さんは何を伝えたいですか。

 非行少年といえば、映画やアニメで描かれているように暴れている子を想像してしまうんですけど、実は大人しい子だったり、一緒に遊ぶと生き生きと話してくれたり、色々な子たちがいます。少年たちは加害者という側面を持つだけでなく、何らかの被害に遭った被害者という側面も持っています。ステレオタイプや偏見の目で彼らをみてほしくないということを伝えたいです。彼らが立ち直っていくためには、社会の受け入れ態勢が必要です。「おかえり」「辛かったね」「これからは私たちが支えていくから大丈夫だよ」と社会全体で受け入れていくような助け合いの精神を持ってほしいと思います。彼らが犯罪に走ってしまったのは生まれつきではなく、社会的環境が彼らをそうさせてしまい、社会的環境が彼らの認知とか行動とか考え方を歪めさせたんだということを伝えたいです。環境は彼らにどうすることもできないので、まずは彼らが非行に走ってしまう環境を良くしていくために一人ひとりにできることは何かということを考えてもらいたいです。いくつか例を挙げると今現在、私が取り組んでいる少年警察ボランティアまたはBBS会(※1)に参加してボランティアという形で各種支援活動に取り組む、一般の方々も参加可能な「公開ケース研究会」に参加して彼らへの理解を深めるといったことが出来ると思います。

※1 BBS会
 様々な問題を抱える少年と、兄や姉のような身近な存在として接しながら、少年が自分自身で問題を解決したり、健全に成長していくのを支援するとともに、犯罪や非行のない地域社会の実現を目指す青年ボランティア団体。

どういう思いを持って活動を続けていますか。

 非行少年たちの置かれている状況や問題は非常に複雑です。誰かが立ち直り支援をしなければならないけれど、世間から彼らへの偏見の目というのは未だににあります。もう少し彼らへの世間の目が和らげば、彼らが今後、社会復帰することができると思うので、もう少し寛容な社会になってくれたらいいなという思いを持って活動しています。それに、非行少年たちに立ち直ってほしいという思いがありつつも、私たちの活動を見て、彼らに「自分もかつて大学生ボランティアや支援者に助けられたから、今度は私が問題を抱えている次の少年たちを助けたい」という思いを持ってもらいたいです。

少年警察ボランティアをしていてよかったことは何ですか。

 実際に接することで、書物では得られない視点や発見、彼らの行動特性や特徴などを知ることができたことです。
 また、主体性が身に着きました。以前は自分から何かをやっていこうとするタイプではありませんでしたが、苦手な問題や分野に対する積極性や主体性が身に着きました。今では、自分から積極的に彼らが立ち直るために、彼らが次の少年たちを助けたいと思ってもらえるように、苦手だった大勢の前での発表もできるようになりました。警察職員の方や他の大学生ボランティアとも話す機会があって、コミュニケーション能力も向上したと思います。それに、発表する時も、どうすれば自分の思いやグループで考えたことが相手に的確に伝えられるのかを考えながら発表していたので、伝える力も身に着いたと思います。
 それに、関わった少年本人から、私に担当してもらいたいと言ってもらえたり、少年の保護者や警察関係者からの感謝の言葉をいただけたりしたことも、活動を続けていてよかったなと思えました。

四国学院大学へ入学した理由を教えてください。

 祖母から聞いた更生保護や立ち直り支援の話がきっかけで、非行少年たちと福祉との関わりが大きいことを知りました。彼らが生きやすい社会にしていくために少しでも力になりたいと思い、社会福祉を学ぶために四国学院大学に入学しました。

大学での学びは、ボランティア活動に活かされましたか。

 学習支援の中で、「心理学概論」で学んだ自己開示を活用したことがあります。私が自分の過去の苦しかった経験などを自己開示したことで、少年たちはこの問題を抱えているのは自分だけではなかったんだ、私は一人じゃない、と少しでも思ってもらえる瞬間がありました。そういう点では、「心理学概論」の授業はすごく活動に役に立ちました。また、「司法・犯罪心理学」で取り扱った非行・犯罪事例または各種考察、非行少年等への対処方法を学んだことで各少年が持つバックグラウンドが想像しやすくなるだけでなく、適切な関わり方の実現に繋がりました。

これからの将来にどう活かしていきたいですか。

 将来は、検事を目指しています。少年係検事として、少年が犯した犯罪または少年の福祉を害する事件や、近年増加している児童虐待事案に関する捜査・公判に携わりたいと思っています。
検事というと罪を犯した人を追及するイメージが想定されるのですが、最近の検察庁は再犯防止に力を注いでいて、不起訴処分になった被疑者に対して、地方公共団体や福祉団体と連携して社会復帰支援を行っています。私も、少年警察ボランティアで身に付けた課題発見力や課題解決力を用いて、彼らが再犯しないように社会復帰を各関係機関と連携しながら支援していきたいです。また、矯正局や保護局などで実際に政策立案や企画立案にも従事をしたいという思いも持っています。実際に調べてみると、福祉を4年間学んで検事になった人はほとんどいませんでした。社会福祉を学んだ検事がいれば、彼らが享受している制度が今よりも変わっていくのではないかと思いますし、その起爆剤に私がなりたいと思っています。

少年警察ボランティアに興味がある人へのメッセージをお願いします。

 この活動に対して戦々恐々することなく、少しでも興味関心を持てば参加してもらいたいです。実際に私も大学1年生の時から始めていますが、その時も私を含めて4人しかいなくて、とてもボランティアの数が少ないです。少年警察ボランティアは、普段自分と関わりのない人たちと関われる貴重な機会です。かつて保護司をしていた祖母も、彼らの思いや経験を聞いていくことが自分自身の学びになったと言っていました。彼らがおかれている状況や問題を知った上で活動してもらえればすごく嬉しいです。少しでも活動に携わりたいという人が増えれば、少年警察ボランティアの全体のレベルも上がっていくと思います。もし将来的に非行少年たちに関わる職業に就かなくても、視野を広げるという意味では、彼らと関わる意義はすごくあると思います。もちろん彼らがやったことは到底、許されるものではないですが「どうして彼、彼女はそういう行動をしたのだろう」「彼、彼女らはどういう状況に置かれていたのだろう」「どういう思いで犯罪に手を染めてしまったんだろう」と想像力を持つことができると同時に社会で起きている様々な問題を一つの側面だけでなく、多面的に見ることができるようになりました。
 まずは、偏見の目で見ることなく、彼らのために何かしてあげたい、何ができるのか、彼らには何が不足しているのか、子どもたちのために何かしてあげたい、という思いがあればすぐにでも参加してほしいです。そうした思いと行動が、やがては大きな輪となり彼らが生きやすい社会に繋がるのではないかと思います。