『出会いの輪』(演劇)

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2017.04.10 演劇

社会学部(演劇コース)2017年度卒業 氏原恭子さん

期間:2016年9月9日~9月19日
活動内容:さぬき映画祭2017『Lemon&Letter』出演/その他エキストラ出演など

『Lemon&Letter』に出演することになったきっかけを教えてください。

―梅木監督が2016年のSARPvol.10「ROMEO&JULIET」を観に来てくださった時、私に目をかけてくださってたようで、公演後に「よかったら映画に出ませんか?」と声をかけていただきました。今まではずっと舞台をやっていたんですけど、映像の演技にも興味がありました。ちょうどいい機会だったので、是非出演したいと思いました。

メインヒロインの高木夕を演じてみてどうでしたか。

―『Lemon&Letter』は本当に純粋な子どもたちの話です。初めて台本をもらって読んだ時、かわいいなぁと思いました。いつまでたっても素直になれない子どもたちが、別れる時にやっと自分の気持ちを直接伝えられるようになるので、本当に成長の物語だなと感じました。私が演じた高木夕は、素直じゃないところが私と似ているなと感じました。でも、私より可愛気があります。将来のことで悩みながらも、頭の中は主人公の海斗一色なところがあって、最初は海斗が東京に行くから私も東京行こうかなとか言っていたりして、「本当に将来それでいいのか!?」と共感できない部分もあったんですけど、最終的にはちゃんと自分でやりたい夢を見つけてお別れをして、「私頑張ってくるね」と自立して、筋の通った子になったのでよかったです。そんな夕役としては、恋する女の子を演じるのが難しかったです。表情をつくる時、カメラで顔をアップで撮られていたので、内心どうしよう、今どんな顔してるんだろう、と思ってドキドキでした。ここをこういう感情でやってほしい、というのは監督に熱く語ってもらっていたので、監督の想いが夕ちゃんに込められていることを感じました。

 

『Lemon&Letter』の舞台、男木島での撮影はどうでしたか。

―撮影初日は、まだ撮影とかではなくてロケ班みたいな感じで、どこでどういう撮影をするのかという説明があって、男木島の住民の人たちに挨拶に行きました。景色とか眺めがすごくきれいで、男木島の人たちはいい人ばかりでした。梅木監督がすごく楽しそうで、のびのびと生きているなぁと感じました。監督の前作『W&M』も男木島が舞台だったんですけど、男木島に旅行に行った時の出会いがとても大きかったみたいです。景色にも一目惚れして、「ここで映画を撮りたい!」と思ったみたいです。撮影が始まると、朝5時頃に起きて、私たち役者はメイクに入って、スタッフさんが現場の準備をしてくれていました。外での撮影が多かったので、天気を見ながら、この明かりの時にこの場所で撮る、というのがけっこうあって、曇ったり太陽が出たりというのを待って撮影していました。フェリーが来る、というシーンでは、フェリーを撮影のためにずっと停めてもらうことはできないので、絶対一発で終わらせよう!と思いながら頑張りました。太陽がとても眩しかったんですけど、太陽の撃退方法を俳優の品田誠さんに教えてもらいました。目を瞑って太陽の方を見てから、目を開けて撮影するということを聞いて、実践してみるとけっこう効きました。その状態でカメラの方を見ると、黒目が大きくなっていたみたいで、「可愛くなってるよ」と言われて、そんな効果もあるのかと思いました。品田さんの演じる海斗が夕を走って見送りに来るシーンがあるんですけど、カメラのアングルなどを決めるために住宅街の坂道で何度も走るシーンを練習していて、部活の走りこみのようになっていました。最終的には品田さんが疲れて、伊藤くんが代わりに走っていました。伊藤くんには今回、本当に色々とやってもらいました。撮影はとても楽しかったです。

男木島での生活で印象に残っていることは何ですか。

―夜のお散歩で、港の方に行ってみると海が光ってるんです。海蛍がいっぱいいて、本当に絶景でした。海蛍を見るのは初めてだったんですけど、星空みたいに光っていて本当にきれいでした。是非、男木島に泊まりに来てほしいです。あとは、やっぱり男木島に住んでいる人たちが印象的でした。みんなでたこ焼きパーティをしたんですけど、その時にゆでだことかサザエを売っているおじいちゃんと仲良くなっていたので、「撮影やから持っていきな」とタコをタダでくれたことがありました。私はタコを取りに行ったんですけど、本当に海からタコを引っ張り出して「ほら、殺してみ」と言われて、普段絶対しないような体験をさせてもらいました。

映像の演技で難しかったことや気をつけたことは何ですか。

―映像をカメラで撮る、というのは本当に難しかったです。物とかを渡す時の高さも、普通に渡す高さではなくてカメラに映るように渡さなければならなかったので、「手をここら辺まで上げて、ここで渡して」というカメラに映る細かい身体の調節とかもあって、けっこう苦戦しました。でも、慣れてきたら、舞台とちょっと似ている部分もあるな、と感じるようになりました。カメラが客席だと思えばいいのか、と、後半は立ち位置とかもスムーズにできるようになりました。同じシーンをカメラの角度を変えて何度も撮っていたんですけど、カメラの位置が違うと自分の立ち位置も変えなければいけなかったので難しかったです。映像だと、アップになると瞬きの動きだけでも大きな動きになるので、表情は硬くならないけど動かしすぎないように、ということに気をつけました。監督が指示しているのを聞いていると、演劇とちょっと似ているところもあるなと感じました。ちゃんと物を見て、触って、リアクションする。その一連の流れが、あまりわざとらしくならないように、自然に、ということを監督はよく言っていました。表情とか動きとかで映る部分が大きいので、そんなに台詞も多くなくて、動きで表現したり、何を考えているのかを伝えるっていうのがけっこうあって、それができるようになったらすごいなと思いました。でも、本広監督やさぬき映画祭の方が『Lemon&Letter』を観てくれて、「良かったよ」と言ってもらえて嬉しかったです。

舞台と映像の違いはどんなところで感じましたか。

―大きな違いは、映像だとシーンごとにカットして、けっこうブツ切りで、時間軸もバラバラなところです。なので、あれ?これって昨日の出来事?今日?と、混乱することがけっこうありました。舞台だと2時間ぶっ続けでどーんとできるので、ずっと集中してできるし、何十回も練習してるからそんなに混乱することもありません。今回の『Lemon&Letter』は、監督が最後までシナリオを良いものにしようと考え直していたので、本番前日くらいに出来た台本を渡されたりと、シナリオが変わることがけっこうありました。前のシーンをちゃんと思い出せたらすんなりいけるんですけど、これいつだったっけ?と考えてしまうと難しくて。でも、今回の経験でシーンごとの気持ちの切り替えができるようになったと思います。舞台は、工程から完成したものをお客さんに見せる時まで、役のことを考えることも全部好きなんですけど、映像はやっぱりまだ難しいなと思うことが多いです。でも、舞台とは全然違うことができる、ということが映像の面白さだと思います。舞台だと、日常的な普通の演技はあまりやらないので、等身大の自分を出せるというか、現代に生きるそのままの自分を演じられるのが映像だと思います。

自分の中で何か変化はありましたか。

―周りの雰囲気を良くしようと思うようになりました。ギスギスしたりして雰囲気が良くないと、みんなが焦って撮影が失敗して長引いてしまうので。色んな人に話しかけたりして交流を深めたり、撮影の時も笑顔でいることを心がけていました。みんな同じところに泊まって生活していたということもあって、スタッフさんたちともけっこう仲良くなれました。撮影中、すごく暑くて、メイクの方が日傘を差してくれたり、他にもびっくりするくらいスタッフさんたちに良くしてもらって、こんな女優で大丈夫なのかなと不安に思うこともあったんですけど、現場でどっしり構えているのも俳優として大事なことなんだと思うようになりました。

本広監督が総監督を務めた丸亀市をPRするショートムービー「HONETSUKIDORI」や本学が舞台となった「君と100回目の恋」にもエキストラとして参加していますが、どうでしたか。

―「HONETSUKIDORI」の時は、侍の役で少しだけエキストラとして出演させていただきました。でも、何度も撮り直しをするのはメインのアップになっている人で、エキストラだと1回良いものが撮れるとそれで終わりなので、楽しむことを第一にやりました。「君と100回目の恋」の時は、遠目から学校生活をしている様子を撮っていたので、すぐ近くで俳優さんの演技を見る機会はありませんでしたが、現場を学ぶという意味ではすごく大きかったです。スタッフさんの動きがすばやくて、助監督の方がどんどん指示を出して、エキストラ一人ひとりに声をかけていました。他のスタッフさんの細かい気配りもちゃんとしていて、俳優さんの立ち位置を全部チェックしている人もいて、すごいなぁと思いました。ひとつひとつのことをちゃんとメモしてやっていて、さすがプロだなと感じました。

『Lemon&Letter』をはじめとする映像作品での経験をこれからの将来にどう活かしていきたいですか。

―映像で学んだこと、自然な動きだとか表情の変わり方だとか、目の動かし方とか、そういうのは演劇でも使えるなと思います。そういう繊細な動きの大切さを本当に感じました。私はけっこうニュアンスとか感覚で動いてしまうので、繊細な動きを自分で意識して、動きを自覚しながらできるようになりたいと今回の経験で思いました。これからは、今のところ舞台をメインにやっていきたいと思っています。映像は、また機会があればやりたいです。来年またさぬき映画祭に関わることがあれば、今度はスタッフもやってみたいです。スタッフさんは大変そうなんですけど、すごく楽しそうでした。それに、監督がすごく一生懸命されていたので、監督の力になれたらなと思います。FM高松のラジオパーソナリティのお話もいただいていて、私は喋るのがあまり得意ではないんですけど、そういうことも経験してできるようになりたいなと思います。

映像作品や演劇に興味がある後輩へアドバイスやメッセージがあればお願いします。

―演劇を全力でやっていると、それ以外の人も目にかけてくれますし、出会いにもつながるので、そういう出会いを大切にどんどん進んでいってほしいです。自分から色んなところに行ったら、どんなことでもできると思うので、是非演劇やってみてください! たくさん出会いが転がっています。映画祭で知り合った方のおかげで丸亀市のショートムービーにも関わらせてもらいましたし、その方たちの劇団の東京公演にも招待していただいたりもしました。今回の『Lemon&Letter』も、私の公演を観に来てくれた梅木監督が声をかけてくれました。その出会いから、どうやって輪を広げられるかが大事だと思います。
私は、年に1、2回くらい自分で観劇ツアーをするようにしています。自分で行くと、東京は何本も公演をやっているので、当たりはずれがあって、自分が良いと思うものになかなか出会えないこともあります。もし演劇やりたい人が行くなら、とにかくたくさん観て、これだって思うものを見つけて欲しいなと思います。

<『Lemon&Letter』あらすじ>
男木島出身のカメラマンを父に持つ主人公の(海斗・少年)~病気を患う母の希望もあり、祖父が漁師をする島に家族3人で帰ってくる~海斗少年が、小学5年の夏、東京から島にある親子が移住してくる。海斗と同じ学年の女の子(夕)~少年・少女の成長とともに繰り広げられる。島で暮らす家族と、海斗と夕の初恋成長物語を描いた映画作品。
本学の非常勤講師梅木佳子さんが企画・脚本・監督を、演劇コース3年氏原恭子さん、演劇コース2年伊藤快成くんが出演しています。
さぬき映画祭2017での上映は終了しましたが、次回の上映会も決定しています。
□5月27日(土曜日)10時~善通寺市民会館~
★さぬき映画祭優秀企画作品を地域へお届け!
映画「Lemon&Letter」&「W&M」善通寺市民会館上映会

さぬき映画祭