『何かを与えられる役者に』(演劇)

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2025.10.14 演劇

社会学部 身体表現と舞台芸術メジャー 早坂健生さん

倉敷工業高等学校出身。
早坂さんは、本学入学前から市民劇団に所属し、本学入学後も様々な舞台に立ってきました。
そして今年、腹筋善之介氏が演出を手掛ける舞台「破壊ランナー」のオーディションに見事合格。2026年4月の公演では、主要キャストとして出演予定です。
また、2025年9月にはマグノリアカフェ「コミュニティ・シアターを構築する」自主公演『桜華城』(2025年9月13日(土)・14日(日))で初めて作・演出を手掛けるなど、活動の幅を広げています。
本学演劇コースで、早坂さんはどのような学びや経験を得ているのでしょうか。

本学に入学したきっかけを教えてください。

――大学には行きたいけど、親に負担をかけてしまうし、自分は何を学びたいのだろう?と進路を悩んでいた時に、僕がお芝居を好きだったこともあって、高校の先生が四国学院大学で演劇ができることを教えてくれました。そこからオープンキャンパスに行ってみて、演劇のスカラーシップ(舞台芸術特別奨学金)があることを知って、オーディションを受けてみたらありがたいことに合格できたので、四国学院大学に入学しました。

本学に入学してよかったことは何ですか?

――自分は高校2年生の時から地元岡山県の市民劇団に入って、大衆向けの商業舞台をやっていました。それは老若男女誰が見ても面白く感じるように作っている舞台なんですけど、四国学院大学では芸術向けというか、伝わらない人には伝わらないけど刺さる人にはすごく刺さるような舞台が多いです。その中でも日常系の芝居は自分が今までやってきていた芝居とは全然違いました。自分が知らない芝居に触れることで視野が広がったので、この大学で学べてよかったと思います。

身体表現と舞台芸術メジャーで印象に残っている授業を教えてください。

――「シーン・スタディ」です。昔の能楽集を取り上げて、能楽を現代版に書き換えたものを演じました。この授業は複数の先生が担当しているので、様々な演劇の手法が学べて面白かったです。その中でも、日常会話を舞台に起こす現代口語演劇は、印象に残っています。というのも、実は自分が今までやってきた舞台と全く違っていたので、最初は苦手意識を持っていました。声の出し方も仕草も違っていて難しくて、わざわざ舞台で日常会話をする必要があるのか?とすら思っていました。でも、実際にやっていくうちに現代口語演劇の面白さというのにも気づけたし、舞台でしか見せられない戯曲があるからこそ、表現できる人間性があることも知ることができました。この大学に入っていなければ現代口語演劇をやっていなかったと思うし、いちから学べているのはすごく楽しいです。それに、将来東京でお芝居をするとなった時、商業舞台だけの経験しかしていなければ苦労すると思うので、この大学で様々な舞台を経験できているのはすごく糧になっています。

「破壊ランナー」のオーディションを受けようと思ったきっかけは何ですか?

――僕が中学生の時に子どもキャストとして出演した岡山の市民劇で、腹筋善之助さんが演出をしていました。大人がどんな稽古をしているのか気になって見学をしていたら、腹筋さんが色々話してくださったのを今でも覚えています。そのご縁もあって、SNSで腹筋さんが「破壊ランナー」のオーディションをやることを発信しているのを見つけました。過去の舞台の様子がYouTubeに上がっていて、それを観てかっこいいと思ったので、オーディションを受けようと思いました。もし腹筋さんのことを知らなければ「破壊ランナー」という作品のことも知らなかったし、受けようとはならなかったと思うので、本当にこれまでのご縁に感謝です。

「破壊ランナー」のオーディションを受けてみて、どうでしたか?

――すごく緊張しました。東京でオーディションを受けるのは今回で2度目だったんですけど、1度目の時は落ちてしまって、東京はハードルが高いと感じていました。「破壊ランナー」のオーディションを受けた時は手応えとかは感じていなくて、他の人たちが本当にすごくて、悔しい思いもありました。だから、合格の連絡をいただいた時は本当にびっくりして、信じられなかったです。でも、受かったのは自分に実力があったからとは思えなくて、組み合わせや運が積み重なって出させていただけることになったと思うので、調子に乗ったりとか安心したりとかは全然ないです。だからこそ、これから実力をつけていけるように、期待を裏切らないように頑張りたいです。

「破壊ランナー」2026年4月の公演に向けて意気込みをお願いします。

――他の人に負けないように絶対にしたいですし、自分のことだけではなくて、しっかりと目の前のお客さんを全力で楽しませたいです。自分が役になりきって、「破壊ランナー」の世界観に見に来てくれた人を巻き込んでいきたいですね。遠方から見に来てくれる人もいるだろうし、お金を払って、時間を割いて舞台を見に来ているお客さんに後悔させるような芝居は絶対にしたくないです。

自主公演「桜華城」をやろうと思ったきっかけは何ですか?

――自主公演をやろうと思ったのは、4年生になって卒業公演をする前に一度自分たちで公演をしてみたかったからです。また、僕自身が岡山でやっていた演劇との違いを知って成長できたので、この大学での舞台演劇しか知らない学生たちが大衆向けの演劇を知らないのはもったいないなと思っていました。こういう舞台もあるということを知ってもらうには、実際に舞台で経験してもらう方が一番だと思ったし、みんなにも新しい世界観を知ってほしかったので、自分が今まで学んできたことを共有する意味も込めて自主公演を企画しました。

作・演出をやってみて、大変だったことや工夫したことは何ですか?

――この「桜華城」という作品は、ざっくり言うと、舞台は戦国時代で、悪役が殿様を倒して成り代わっているから、みんなでその悪役を倒そうというストーリーです。圧倒的に悪い人がいて、主人公が仲間とともに悪を倒す熱い展開もあって、起承転結がはっきりしている作品です。観ている人が飽きないように、建物のセットや音響、照明も派手にしました。
今回初めて脚本を書いたんですけど、やっぱり大変でした。書いたはいいけど先の展開に悩んだり、1日2行しか書けない日もあれば1日3ページ書ける日もあって、自分の頭の回転にもよるし、脚本が完成してみんなに渡すまではずっと不安で。それに何よりお客さんに分かりやすくするためにはどうしたらいいんだろうと色々考えました。

自主公演をやってみて、どんなところでやりがいを感じましたか?

――やっぱりお客さんが褒めてくれたのが一番嬉しかったです。あと、キャストやスタッフのみんなが楽しかったと言ってくれたことも、すごく嬉しかったです。お客さんに対しては、今回は無料公演でしたけど時間を払って来てくださっているので、それに見合った以上の対価をこの舞台で見せなきゃいけないっていうのがあったし、キャストやスタッフも夏休みの時間を使って協力してもらっているのでこの舞台に参加して後悔する人が一人でもいたら嫌だなと思っていました。だから、お客さんだけでなく、キャストやスタッフからもこの舞台に出て後悔した人がいなくてよかったです。まだまだ反省点はありますが、今回の経験を今後に活かしていきたいです。

自主公演を通して、自分が成長したと思うところを教えてください。

――脚本作りの段階から西村先生と仙石先生にアドバイスをいただいたり、自主公演を終えてからもフィードバックをもらったり、作品の書き方とか演出のつけ方について色々勉強になりました。先生方がいなければ完成していないと思うので、本当にありがたかったです。でもやっぱりみんなをまとめる力というか、その場の空気を壊さない力というのは大変だなと感じました。演出というのは舞台のリーダー的な存在になるので、そんな自分がちょっとでも崩れて方向を見失ったらみんながどこに進めばいいか分からなくなってしまうし、イライラしていたり落ち込んでいたら場の空気が悪くなってしまいます。だから、稽古場の空気を自分が預かっている立場というのを意識して、今まで以上に周りを見て、みんなが楽しく、真剣にできるように気をつけました。そういうこともあり、今回の自主公演では、作品や演出以前に人として成長ができたと思っています。自主公演をやりたい、演出をしたい、と思ってもこういう経験はなかなかできるものでもないので、この大学に感謝しています。それに、「自主公演」と言っていますけど、学生だけでやったわけではないので、関わってくれた先生や見に来てくれた人にも本当に感謝しています。

今回の経験を将来にどう活かしていきたいですか?

――将来は、役者になりたいと思っています。自分は、観ている人には楽しんでほしいのはもちろんなんですけど、楽しむだけではなくてお客さんに何かを与えられる役者になりたいです。舞台を観に来ている時点で興味を持ってくれているのはありがたいんですけど、やっぱりそこからその想像以上のものを返していかないとお客さんは次の公演も観に来てくれないと思うし、自分という役者に興味を持ってくれなくなると思います。それに、自分もお客さんからいいものをたくさんもらっているので、もっと自分の中で嚙み砕いて昇華して、もっともっと成長していける役者になりたいなと思います。

舞台「破壊ランナー」

脚本:西田シャトナー
演出:腹筋善之介
演出原案:西田シャトナー 腹筋善之介

2026年4月公演
府中の森芸術劇場 ふるさとホール