卒業生紹介

郡 章人さん

社会福祉学部 1998年度卒業
地方独立行政法人徳島県鳴門病院 勤務

学生時代はどのような学生でしたか。また大学生活で印象に残っていることは?

 特別推薦入試(課外活動)で入学し、一人で水泳部を創設して活動をしていました。大学1年次の秋に父が他界し、学費や生活費などを得るため、アルバイトを行ったり、奨学金を受けながらの大学生活でした。大変でしたが、当時の学生課の方々や社会福祉学部の先生、友達、そして家族が支えてくれました。4年間水泳を続け、四国内の大会では表彰台を逃したことは一度もなく、1年次に課外活動で学長賞、2年次に中四国インカレで2位になったことなどはいい思い出です。

 大学生活で印象に残っている授業は二つ。一つは、「医療福祉論」。医療現場で医療ソーシャルワーカーとして実践されていた先生の講義は、実践感覚に満ちていて、興味深く、将来は先生のような医療ソーシャルワーカーになるぞという気持ちになりました。二つ目は、4年次に受講した「臨床実習」。現場の緊張感に触れると同時に、温かく、丁寧な相談支援に従事する現場の医療ソーシャルワーカーの姿勢に感動を受けました。

大学時代の経験は、現在どのように活かされていますか?

 学生時代に、「困った時には言葉にして、人に助けを求める」ことが大事だと学びました。困った時に助けを素直に求めることは恥ずかしいことではなく、自分の抱える問題や課題を早く解消する手段につながることだと学びました。この経験は、医療現場でソーシャルワークをする上で、患者さんの多種多様な課題やニーズに対し、その解決方法を知っている当事者の方たち、院内外の多職種、専門職の方との連携、部署内でのチームワークづくりにも生かされています。

現在の職業を選んだきっかけはなんですか?またどのようなことをしていますか?

 今の仕事を選んだきっかけは、高校3年次に父が肺がんを発病したことです。父や家族、自分自身にいろいろな不安、生活上の心配ごとを抱える経験をしました。この経験を今度は同じように医療機関で不安を抱えている方の力になれることができればと考え、絶対に「医療ソーシャルワーカー」になろうと決心しました。

 現在の勤務先では、社会福祉士として相談面接援助の技術を駆使し、患者、家族の思いや力を発揮できる環境づくりのため、院内外の多職種、社会資源を持つ人と連携し、取り組んでいます。また、徳島県医療ソーシャルワーカー協会の会長として、県内の医療ソーシャルワーカーの人材育成やネットワークづくりの他に、さまざまな公的な会議で医療ソーシャルワーカーとしての意見や提案など、地域包括ケア、地域共生社会の推進に向けて微力ながら支援の仕組みづくりなどにも参加しています。

現在の仕事での魅力や喜び、苦労したことはなんですか?

 不安な顔で相談に来られた患者やその家族が、相談面接援助の過程でどんどん前向きな言葉が出たり、笑みが出たり、元気と自信を取り戻したり、また大変な課題に一緒に取り組んでくれたりと前向きな変化を感じ取れる瞬間、その機会に触れる度に、この仕事を選んだ喜びを感じています。一方で、難しいところは多様な価値観をもつ患者さんや家族を理解すること、専門職ごとに大事にしている価値観があり、それを理解しながら関係性を構築していくことです。対人関係はいつまでたっても難しいし、他者の価値観を尊重することは言葉にすること以上に難しいことだと思いながら向き合っています。

これから社会に出ていく後輩に、先輩としてメッセージをお願いします。

 社会に出るといろいろな能力が求められますが、私が大切にしているのは「受容力」です。理想と現実との間に開きが大きければ大きいほど、苦しむことがあります。時に簡単に答えが出せない、見出せない場面にも直面しますが、そういった否定的な出来事や感情から逃げるのではなく、受けとめる力も必要です。自分がなぜ耐えることができているのか、受けとめることができたのかを振り返る過程に、自分にとって支えになっている大切な存在、大切にしていることに気づく経験につながると思います。