現代のストレス社会の背景には、時代の変化に伴う多様な文化や価値観の拡がりが考えられます。このような社会に生きる人たちの中には、こころの不調を訴える人も少なくありません。たとえば、うつ病、依存症、また、虐待、いじめ、ゲーム依存などがあげられます。これらは、私たちの身近な生活の中で見られることです。
メジャーでは、精神保健福祉の専門職養成にとどまらず、広くメンタルヘルス課題に関心を寄せ、取り組めるよう教育しています。
統合失調症をはじめとした心の病は、なぜか社会から忌み嫌われてきた歴史があります。「そうしたことについては正しく学ぶ機会が少ないものですから、『しょうがない』という部分もあるでしょう。しかも、その間隙を家庭での間違った知識が伝えられてしまっている現実もあるから、いつまで経っても差別や偏見はなくならないんですね。知らないことは、正しく理解する。まずは、そこから始めないと」と言うのは、こころとからだの福祉メジャーコーディネーターの富島教授です。
口調はご出身の広島なまりを端々に感じさせるものの、“毅然と真っ直ぐ”真摯に取り組む姿勢には大いに勇気づけられます。
「皆さんに『自分がこころの病気になると思うか』と尋ねると、たいていの方が『思う』とは答えません。でも人はこころとからだがうまく機能し合って初めて健やかに生きていけるわけで、そのバランスが崩れると誰だって社会生活は難しくなります。そう思えるか、どうか」
すべからくこのメジャーでは、精神保健福祉に関わる一切を身近な問題として捉えていくことが大前提と続けます。自らや周囲の大切な人たちがこころの病になるかもしれないと想像するだけで、学びに対する心構えまで正されるもの。そうしてこころの病を見つめる距離をグッと縮めた上で、専門的な知識や心理面にも配慮した援助技術などを学び取ってゆく……そんなアプローチの中にこそこのメジャーの真髄はあるのです。
一方このメジャーを語るのに特筆すべきは、かかわる教員が豊富な実践と理論を併せ持つ、精神保健福祉界でも指折りとされる面々だということ。富島教授は言い切ります。「とにかく大切なのは、実際にこころの病を持つ人々との直接的なかかわりの中から何をどう学ぶか。私は主にそうした実践の場を担当していますが、それだって確かな理論に裏打ちされたものでなくては何にもなりません。このメジャーが幸いなのは、私だけではカバーしきれない部分を、20年を超す旧知の間柄である西谷教授はじめ、中四国地区屈指の現場の精神保健福祉士に支えられていること。皆、情熱があるし、本気で学生と向き合ってますしね」
あふれる自信は、当然学生にも響いて伝わるのでしょう。授業を進めるに従って、関心もどんどん高くなってくるそうです。
このメジャーに進むことで得られる国家資格の一つに、精神保健福祉士があります。しかしながら長引く景気沈滞の影響でしょうか、社会的に期待されているにもかかわらず、全国的に精神保健福祉士を目指す学生が少なくなってきているそうです。
「とはいえ、ウチで学ぶ学生は、真摯に精神保健福祉士を目指しています。メジャーを選ぶまでは、『何を学ぶところなの?』というくらいマイナーな存在なのですが、学ぶほどにその意味が分かってき、この世界に身を置くためにまずは資格をといって、学ぶ姿勢が違ってきます。もちろん篩にかける意味もあって、最初はかなり厳しく接しますよ」
自信も実感もあるという一方で、「まだまだ」「もっともっと」と思う部分もあると言います。それは、日頃お世話になっている地域への返礼としての貢献であるとか、諸々の社会的些事も含みながら……。
「結局は、人としてのコミュニケーションが当たり前のようにできる、ということに尽きるんでしょうね。こころの病を持った人にも、その方を取り巻く地域の人々にも、『当事者を主体にして考えて』という想いからスタートすれば、適当に済ませることはできないはず。いつか早く、誰もが暮らしやすい社会になれば、と思ってますよ」
そのための取り組みも、様々なカタチで行っているそうです。マイノリティ理解はもちろん、愛さねば始まらないという感じを抱いたお話ではありました。
こちらから精神保健と福祉メジャーのカリキュラムを確認できます。
こちらから過去の研究テーマタイトルを見ることができます。
●精神科ソーシャルワーカー(精神保健福祉士) ●医療ソーシャルワーカー
●スクールソーシャルワーカー ●障害者支援施設職員(生活指導員・職業指導員)
●公務員(行政福祉担当職員) ●教員(中学校・高等学校・特別支援学校)など
こちらから在学生の履修スタイル例や、このメジャーで学んだことなどを紹介しています。


