秋季キリスト教 強調週間
2013年10月22日(火)~24日(木) ロングチャペル10:45~11:25
「小さな者を一人でも軽んじるな」
(マタイによる福音書10章18節)
10月22日(火)~24日(木)は、秋季キリスト教 強調週間です。今回は、部落解放同盟栃木県連合会執行委員長の和田献一先生を特別講師に迎えて行われます。清泉礼拝堂へ、ぜひ足をお運びください。
【プログラム】
10月22日(火)
題目 「Social Inclusion」
(すべての人は例外なく社会の一員として処遇される)
聖書 マタイによる福音書25:31-40
讃美歌 讃美歌21-280 「馬槽のなかに」
10月23日(水)
題目 「すべての人は存在するだけで尊い」
聖書 マルコによる福音書2:13-17
讃美歌 讃美歌21-280 「馬槽のなかに」
10月24日(木)
題目 「安心してください!社会が支えます」
聖書 マタイによる福音書20:1-16
讃美歌 讃美歌21-280 「馬槽のなかに」
★ 講師を囲む学生のティー・タイム ★
日時:10月23日(水)15:10~ 場所:清泉礼拝堂2階 集会室
どなたでもお気軽にどうぞ!!
【講師プロフィール】
和田献一 先生
現職 : 部落解放同盟栃木県連合会執行委員長
部落解放同盟中央本部中央執行委員
日本基督教団関東教区常置委員
日本基督教団氏家教会役員
[略歴]
1947年 東京に生まれる。
国際基督教大学卒業後、栃木県を中心に部落解放運動に取り組む。
1987年 フィリピン・コルデリエラ山岳地域の先住民族と連帯交流。
1992年 インド・タミルナドウ州で被差別階層ダリットの村の開発プロジェクトを推進。
栃木県人権施策推進審議会委員
宇都宮大学で人権教育実地研修を担当
2004年~2010年 日本基督教団常議員
NPO法人 人権センター・とちぎ副理事長
栃木県部落解放共闘会議副議長
〔著書〕
『ちょっと待って!人権がある』2006年 解放出版社
『被差別部落の民俗』共著 1998年 部落解放同盟栃木県連合会
『栃木県部落解放運動の歩み』共著 1992年 部落解放同盟栃木県連合会
『実践の観念論を糺す-栃木県宗務所管内寺院住職差別発言事件について』 1995年 曹洞宗宗務庁
『未来を紡ぐ大地・インド』 1992-2003写真報告集 人権センター・とちぎ
『未来を紡ぐ大地』報告集 2012年まで毎年 人権センター・とちぎ
『フィリピン訪問・報告文集』1986-2008 人権センター・とちぎ
「小さな者を一人でも軽んじるな」(マタイによる福音書18:10)
和田 献一(部落解放同盟栃木県連合会執行委員長)
日本では、長く続いてきた農村型社会が崩壊し、都市型社会が出現しました。地域共同体や家族共同体などの互助システムが個人を支えてきた時代が終わり、都市型社会になり、「一人で自分の責任で生きていけ」という市場原理の働く競争社会、弱肉強食の社会になりました。「一人で生きていけ」と言われても、生身の人間はさまざまなリスクを抱えていて、一人で生きていけません。大人に頼らなければ生きていけない子どもであるリスク、病気になったり、事故にあったり、ケガをしたり、リストラにあって解雇されたり、そして誰でもが介護を必要とする高齢者になるリスクです。こうした個人が抱えるリスクは、一人では負担できませんから社会全体で分かち合うのです。都市型社会だ、競争社会だと言っても、支えあい、分かち合う社会連帯を、人権原則に従って、「信頼しあい、協力し合って」新たに作り上げ、社会保障制度を再編しなければならないのです。
例えば、年金制度は本来、世代間扶養という世代を超えた分かち合いによって、「信頼と協力」によって成り立つものなのです。現役世代が自分の給料を削って保険料を収め、高齢者を支えます。現役時代に支えた自分が高齢になれば、「安心してください、次の若い世代が給料を削って支えます」という「信頼と協力」が制度を支えるのです。
残念ながらこの国では、都市型社会になって新たに社会連帯を構築できず、住民は互いを信頼せず、協力もしない状況にあります。信頼しないから、自分の時代には年金制度は崩壊していると考えて、年金保険料を滞納し、制度への協力をしない人が増大しています。
社会連帯が崩壊した社会では、深刻な人権侵害状況が生み出され、人権侵害が多発していきます。急増する子どもの虐待は、年間60,000件を超え、1週間に1人が虐待死する事態です。家の中で介護放棄されて餓死する高齢者。寝ずに働いても生活保護基準より低い賃金しか手にできないワーキングプア。自殺者が毎年30,000人を超える異常事態。最後のセーフティネットと言われる生活保護を強制的に返上させられて餓死した家族。日本の社会は弱肉強食の社会のただ中にあります。
放置しておけば、力のあるものが実力行使をするだけの「力が支配」する弱肉強食の社会になっていきます。生身の人間は今、勝者であってもいつ敗者になるかわかりません。「信頼と協力」のシステムが社会に組み込まれていなければ社会は不安に満ちていきます。
「すべての人が例外なく社会の構成員として人権が保障される社会」は、憲法や国際人権諸条約が規定する人権原則が十分に機能する、「法が支配」する社会なのです。「力の支配」する社会を「法の支配」する人権が保障される社会に変えていくことです。「安心してください!社会が支えます」という社会連帯の声が響く社会を目指すために、人権原則を高く掲げて、憲法や国際人権諸条約が示す国際人権基準を深く学び、機能させていくことに全力をあげ、人権侵害の状況を変えていくことです。
イエス・キリストが辺境の地ガリラヤで福音を述べ伝えたとき、「地の民」と呼ばれた貧しく、抑圧され、差別されていた小さくされた者たちが周りにいました。「この人々こそまず救われなければならない」と叫んだイエス・キリストの歩みへの報いは、十字架刑による死の弾圧でした。しかし、ともされた光は、「地の塩」「世の光」となって受け継がれています。「行って、同じようにしなさい」という福音に生かされて歩みたいと思います。