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2020 年度 大学における文化芸術推進事業

地域の課題に向き合う社会包摂型劇場を創り、運営していくためのアートマネジメント人材育成プログラム
大学と連携する丸亀市の新市民会館「(仮称)みんなの劇場」開館準備プロジェクト2020

「課題リサーチ・プロジェクト」では、昨年度から引き続き矯正施設、福祉施設、教育現場で、さらなる課題の掘り起こしとそれらの課題に対する文化芸術からのアプローチについて本学教員と専門家、丸亀市文化課職員が考察しました。活動報告はこちら。
「アウトリーチ・プロジェクト」では、課題リサーチ・プロジェクトで得た知識や考察をもとに地域課題解決のためのワークショップを、矯正施設、福祉施設などで行いました。また、保育所・幼稚園計11か所で、幼児向け演劇作品の上演も行い、様々な角度からアウトリーチ事業を実施しました。活動報告はこちら。
「シアター・プロジェクト」では、ノトススタジオにプロの劇団を2 団体招致。演劇公演の運営や、美術・照明などのスタッフ業について学びました。また、劇団の制作者から、国際共同企画に関する制作業務についてのレクチャーを開講し、より実践的で地域性・国際性を備えた人材育成プログラムを実施しました。活動報告はこちら。
「評価・プロジェクト」では、本事業が社会の課題解決にどのような影響を与えているのかを検証。地域の福祉施設や教育現場のニーズに沿え合いを繰り返し行いました。また、年度末には「活動報告会」を開催し、客観的・専門的な視点からフィードバックの機会を設け、最終年度に向けて人材育成プログラムのブラッシュアップを図りました。活動報告はこちら。

◎共催団体からのお声
今年度は、行政と大学だけでなく、社会課題の解決に取り組む NPO 法人 や女子少年院と協働することで、産学官が連携して社会課題解決に取り 組んでいくための基礎を作ることができました。それぞれの強みを生か し協働することの効果は大きいと実感しました。今後は、将来的なビジョンをより具体的に見据えながら、持続可能な協働の形を模索していきたいと思っています。(丸亀市産業文化部文化課)

課題リサーチ・プロジェクト活動報告(2020年度 大学における文化芸術推進事業)

昨年度から引き続き矯正施設、福祉施設、教育現場で、さらなる課題の掘り起こしとそれらの課題に対する文化芸術からのアプローチについて本学教員と専門家、丸亀市文化課職員が考察しました。また丸亀市は、課題とニーズ把握のためのアンケート調査や、福祉施設・医療機関・コミュニティなどと「車座集会」で意見交換を行っており、そこから得た情報をもとに、今年度は新たに、障がいをもつ利用者の生活と労働を支援する福祉事業所にもヒアリングを行いました。ヒアリングで得られた結果を基に、本学教員らが丸亀市の各施設に特化したワークショップの研究と開発を行いました。

◆丸亀少女の家
ファシリテーター:仙石桂子(四国学院大学准教授) 2020 年7 月~12 月
昨年度は、施設職員に向けて即興演劇ワークショップを実施しました。これにより、演劇を通じた表現教育・コミュニケーション教育の可能性を感じていただきましたので、在院している少女たちの課題の解決に役立てられないかと、施設職員と、即興演劇の要素をどのような形で矯正教育に取り入れればよいかについて話し合いました。
【どんな課題?】
在院している少女たちは、複雑な家庭環境や、問題に対して適切な対処方法を教えてくれるモデルとなる人の不在などにより、 適切な社会的スキルを獲得しにくい状況のまま少女の家に収容されている場合が多いそうで、少女の家でのプログラムを終え、社会に出た後の対人関係(家族・職場・交友)をいかに構築するかが課題です。
【どうアプローチする?】
少女の家では、もともと出院後の危機場面を想定した社会適応訓練(ソーシャルスキルトレーニング)を実施していましたが、このロールプレイに大学で演劇教育を受けた経験のある者が介入し、少女たちとともに取り組めば、より現実社会に近い形での実践ができるのではないかと考えました。ロールプレイの設定を、少女たちのニーズに沿ったものとし、より詳しく対処方法について学んでもらうことを目標に、ファシリテーターと施設職員が何度も打合せを重ねました。
◆特定非営利活動法人 SAJA 就労継続支援B型 たんぽぽ
ファシリテーター:仙石桂子(四国学院大学准教授) 2020 年7 月~12 月特定非営利活動法人 SAJA は、障がいをもつ利用者の生活と労働を支援し、地域において利用者自らが描く安心できる生活の確立と維持を支援するNPO 法人です。メンバー(利用者)さんとスタッフ(福祉施設従事者)さん、理事⾧である本学社会福祉学部教授の西谷清美氏と一緒に「物語を作って遊ぶ」というイメージで即興演劇のワークショップを行うことにしました。まずは 物語を作るところから始め、その後、それを自分たちで演じてみることにしました。
【どんな課題?】
精神障がいがある事業所利用者は、幻覚や妄想について語ることは良くないことだと思ってしまう人が多いそうです。自身からで てくる幻覚・妄想をクリエイティビティとして捉え、他者と共有できる場を創りたいと思っています。
【どうアプローチする?】
即興演劇の “頑張らない”、“弱さを認める”、“ユーモアを大切にする” という要素を取り入れ、幻覚・妄想について、語り合う場 を作ります。幻覚や妄想をもとに、一人ひとり違うキャラクターを創り上げ、ひとつのストーリーに仕上げていきます。それらのワークを通して、のびのびと語ったり、演劇のワクワク感を体感してもらいます。

アウトリーチ・プロジェクト活動報告(2020年度 大学における文化芸術推進事業)

◆即興演劇を取り入れたソーシャルスキルトレーニング
2020.8~2021.1(計6 回)
講師: 仙石桂子(四国学院大学准教授)
場所: 丸亀少女の家
対象: 丸亀少女の家在院者(参加者6名)

普段、丸亀少女の家で行っているソーシャルスキルトレーニングでは、少女の家でのプログムを終え、社会に出た後に起こりうる対人関係(家族・職場・交友)の危機場面を想定し、在院者同士もしくは職員が入ってロールプレイを行い、内容について振り返っています。現実社会の危機場面で咄嗟のアクションを取らないといけない状況に、即興演劇の手法が効果的であることから、ロールプレイに演劇教育を受けた経験がある本学の卒業生が参加し、より現実社会に近い形で行いました。
第1回目は、交友関係における危機場面を、「出院後、ショッピングモールで以前交友のあった不良少年にばったり出くわす」という設定にし、在院者同士でロールプレイした後、在院者と演劇経験者で演じました。演劇経験者が介入したパターンでは、在院者が想定していないことに対して即興で対応する場面が見られ、在院者たちの想像力・表現力を向上させるきっかけとなりました。職員たちも、普段ロールプレイしているのとは違い、よりリアルな言葉(セリフ)や表情、態度など演じ方について体感することができました。即興演劇を取り入れたトレーニングを福祉施設で実施することで、福祉施設従事者に、表現教育・コミュニケーション教育の有用性を体験してもらうことができました。また、丸亀市文化課職員は、演劇関係者が介入したロールプレイがもたらす成果を見出すために、フィールドノーツを書き、ロールプレイ後、本学教員らと振り返りを行いました。全トレーニングを終えた後には、参加してくれた在院者と職員にインタビュー調査を行い、本学社会福祉学部助教の北川裕美子氏の協力を得て、即興演劇をソーシャルスキルトレーニングに取り入れることで得られた結果について分析を行います。これらを通して、丸亀市文化課職員は、社会的価値を可視化するデータを収集することができ、今後、劇場の社会包摂機能を説明するエビデンスの獲得につなげることができました。

◎参加者からのお声
対人関係の課題を有する少女たちが多い中、少女たちと年代の近い演劇 経験者にソーシャルスキルトレーニングに参加していただくことで、い つもとは違う空気が生まれ、社会に帰ってからの生活がより想像しやすいものになったと思います。また、ロールプレイ後のフィードバックにおいて、一般の方の視点から良いところや改善点を言っていただくことで、どのような対応が望ましいのかを多角的に考えられるようになったように感じます。御協力いただき、ありがとうございました。

◆「演劇」を中心に遊び合う瞬間
2020.11~2021.3(計3回)
講師: 仙石桂子(四国学院大学准教授)
場所: 特定非営利活動法人S A J A就労継続支援B型たんぽぽ
対象: 事業所利用者(参加者6名)

物語をみんなで作って遊び合うワークショップ。アイスブレイクで緊張をほぐした後、参加者それぞれに「なりたい役」を考えてもらいました。

チームに分かれて、その「役」がどんな性格や年齢で、仕事は何なのか、また、その登場人物たちがどんな関係なのかを想像し、模造紙に書き込んでいきました。書いている瞬間は、笑いあり、うーんと悩む場面ありと、各チーム苦戦するところや、盛り上がるところもそれぞれ異なりました。「市⾧」「総理大臣」「ロシアの美女」「ベテラン女優」など自分の頭の中の様々な役を、他の参加者たちと共有しながら、チームで物語を作っていきました。

自分ではない「なりたい役」で、他の人と瞬間的にコミュニケーションをとり、チームの中で対話をしながら、「演劇」を中心に遊び合いました。その後、それを元に演劇にして発表しました。リハーサル時間もあり、構成もきちんと何度も練習できるチームも、話がぎりぎりで決まり、即興で演じるチームもあり、「遊び合い」は発表の際にも「演じる側」「見る側」ともに興味深いものとなりました。そして最後には振り返りを行い、お互いの感想を共有しました。ワークショップ後に福祉施設従事者にインタビューを行った際には、普段のメンバーさんと異なる一面が出てきたこと、自分自身の「演じてみる」ことの可能性について話してくれました。

◆子ども向け演劇『さる・くる・さる』
2021.1~2021.2(計11回)
講師: 西村和宏・阪本麻郁(四国学院大学准教授)
場所: 丸亀市内の保育所・幼稚園1 1 カ所
対象: 園児(参加者0~5歳児約8 0 0名)

コロナ禍で様々な体験や学びの機会が失われた保育所・幼稚園の子どもたちのために、本学教員で演出家の西村和宏と振付家の阪本麻郁が共同でオリジナルのパフォーマンス作品を創作。出演者はマスク着用で2名のみ、子どもたちとの接触なしなど感染症対策をしっかり行った上で、丸亀市の保育所・幼稚園11カ所で上演しました。観劇前の準備としてダンスのワークショップを阪本が担当し、その後にパフォーマンスを上演。

オリジナルの楽曲に合わせて、女の子の言葉遊びとおさるがコミカルに動く本作は子どもたちに大好評でした。

上演後、子どもたちからは、「おさるが寝たところが面白かった」「女の子が可愛かった」「音楽が良かった」「明日も来て!」などの声が上がり、園⾧先生からも「子どもたちへの言葉や体への興味が深まる」「来年度も来て欲しい」「大人も楽しめた!」など嬉しい言葉をたくさんいただき、改めて幼児教育における舞台芸術の必要性を実感しました。

シアター・プロジェクト活動報告 (2020年度 大学における文化芸術推進事業)

マームとジプシー公演  『てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。
ことなった、世界。および、ひかりについて。』

2021.9/26、9/27
講師: 西村和宏(四国学院大学准教授)
場所: ノトススタジオ、ミーティングルーム
対象: 丸亀市文化課職員、大学生(参加者9 名)
マームとジプシー公演
ノトススタジオで上演されるマームとジプシーの公演運営に、丸亀市文化課職員が参画。今年度は、国際共同企画を予定していましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、イタリア人俳優の来日の見通しが立たず、やむを得ず演目を変更することになりました。本学教員の指導のもと、公演5か月前より、上演に関する渉外、宿泊・移動の手配などの演劇公演についての制作実務に携わりました。その他、仕込み・当日公演・バラシ作業に関するスケジュール調整について担当者間で打合せを重ね、当日は劇場での受付を担当し、開演までの流れについて学びました。

また、マームとジプシー制作の林氏による、国際共同企画に関する制作業務についてのレクチャーを開催。当初上演を予定していた、国際共同企画『IL MIO TE MPO -わたしの時間-』のイタリアでの経験について話を聞くことができました。

国の違う俳優が集まる場合の企画に関する工夫や、俳優・スタッフが平等に作品創りに携わる重要性について学びました。また、より多くの、かつ多様な客層に演劇を楽しんでもらうために、演劇以外のアーティストとのコラボレーション企画や集客方法についても聞くことができました。

青年団公演『眠れない夜なんてない』
2021.2/18 ~ 2/20
講師: 西村和宏(四国学院大学准教授)
場所: ノトススタジオ、ミーティングルーム
対象: 丸亀市文化課職員、大学生(参加者2 4 名)


プロの舞台監督や照明オペレーターから作業工程を学びました。本公演は、俳優だけで15名、スタッフも入れると20 名の受け入れとなりました。劇団の受け入れや、当日運営に関して、実際に劇団で実施していることを教えてもらいながら、実践しました。今年度は、コロナ禍の中、演劇公演を行うということで、劇団内で行っているコロナ対策などについても、詳しく聞くことができました。また本学演劇コースの卒業生で青年団制作の太田氏より、制作という仕事について教えてもらいました。現場での声を聞くことで、制作者が担うべき業務について学ぶことができました。公演までにやるべきこと、特に広報・集客について、ホームページ、SNS の効果的な使い方や、情報公開についての劇場と劇団のやりとりについてもポイントを教えていただきました。通常の劇場での制作業務に加え、豊岡演劇祭など、大きなイベントを経験している制作者から、実経験を聞くことができたのは、将来制作者を目指すものにとって大きな収穫となりました。

 

評価・プロジェクト活動報告 (2020年度 大学における文化芸術推進事業)

評価プロジェクトでは、各ワークショップの実施後に、次回の実施に向けて、より参加者のニーズに沿えるよう、打ち合わせを重ね、ブラッシュアップを行いました。また、ワークショップや公演がどのように地域の福祉施設や教育現場に影響を与えたか、ニーズ調査の結果を踏まえながら考察。市民会館の開館に向けて、今回行ったワークショップ・公演や、劇場そのものが社会的にどういう影響を与えるのか、なぜ必要なのかを、市民に対してどのように説明すればよいかを話し合いました。
また、2021 年3月18 日には丸亀市文化振興審議会特別委員でもある特定非営利活動法人iさいと代表理事の井上優氏をファシリテーターとして迎え、「活動報告会」を開催。今年度の活動の振り返りを行いました。報告会には、本学教員と丸亀市文化課職員、受講生が参加し、前半は準備プロジェクトで得た知識や体験の活動報告を行い、評価プロジェクトの検証結果も合わせて参加者へフィードバックしました。
後半は、ワークショップを開催した施設職員が、他の施設で行われた活動を見て、自分たちのところでも取り入れられないか、もしくは応用できないか等を話し合いました。
本学教員と丸亀市文化課職員は、今後、新しい市民会館で、市民に向けたどのようなアウトリーチ事業が必要かについても言及。最後には、次年度以降の、地域・行政・大学間での持続可能な協働の形を探りました。
活動報告会

2019 年度 大学における文化芸術推進事業

地域の課題に向き合う社会包摂型劇場を創り、運営していくためのアートマネジメント人材育成プログラム
大学と連携する丸亀市の新市民会館「(仮称)みんなの劇場」開館準備プロジェクト2019

「課題リサーチ・プロジェクト」では、小学校・保育所などの教育現場や福祉施設にファシリテーターと丸亀市文化課職員が赴き、課題やニーズを丁寧にヒアリングしました。また国内外での先進事例を調査することで、地域の課題の把握・それに対する対応について学ぶことができ、新市民会館のあり方への参考としました。活動報告はこちら。
「アウトリーチ・プロジェクト」では、社会包摂型劇場の開館に向けて市民のアートへの理解を深めるとともに、アートを介したつながりや気付きを生み、自己承認欲求を満たすきっかけ作りを目的に、先鋭的な演劇・ダンスのワークショップを教育現場や福祉施設で実施しました。「課題リサーチ・プロジェクト」で掘り起こした市民の課題・ニーズを解決するためのアウトリーチ事業の重要性を体感することができました。活動報告はこちら。
「シアター・プロジェクト」では、青森を拠点にするプロの劇団を招聘し、公演運営に丸亀市文化課職員・受講生が参画しました。上演に関する制作実務のほか、公演に付随し演劇ワークショップ、アートボランティアの募集を行うことで舞台芸術を観る人・やる人の育成に焦点を当て活動しました。活動報告はこちら。
「評価・プロジェクト」では、上記プロジェクトでの活動全体を振り返るとともに、公演やアウトリーチ事業の社会的価値を可視化し、説明責任を果たせる能力を身につけました。活動報告はこちら。

◎共催団体からのお声(丸亀市産業文化部文化課)
新市民会館開館に向け、行政と大学という異なる分野がお互いの強みを活かしつつ、地域住
民の福祉向上のために協働すべきビジョンを共有できました。地域の課題解決に向けたアプ
ローチや人材育成について相乗効果が得られたと感じています。 また、大学生と地域が関わ
ることによる効果は大きいと実感しました。大学には様々な研究目的を持った方がいるので、
今後は幅広い分野で協働できる方向性を模索していきたいと思っております。

 

課題リサーチ・プロジェクト活動報告(2019 年度 大学における文化芸術推進事業)

◆海外劇場の先進事例調査
イギリス・ドイツにおいて先進的な取組みを行っている中規模劇場(イギリス劇場1 ヶ所、ドイツ劇場3 ヶ所)の視察、対面インタビュー調査を実施しました。

対象:本学教員、丸亀市産業文化部文化課職員(参加者4 名)
開催日:2019 年9 月19 日・20 日・23 日・25 日・27 日

Everyman & Playhouse Theatres | イギリスリバプール
Everyman & Playhouse Theatres はCivic Engagement(市民とのかかわり)をかかげて、作品を創るだけでなく、社会とかかわることに誇りをもち、様々な弱者支援のプログラムを実施しています。劇場オペレーションや資金集めの他、地域の小学校と連携して演劇ワークショップを開発・実施する「ラーニングパートナーシップ」や、俳優・舞台スタッフ・プロデューサーを目指す若者を対象にしたYoung Everyman Playhouse(YEP)の成功事例ついてもお聞きしました。これらの先鋭的な取り組みは、社会的に大きなインパクトを与えており、新市民会館の企画・運営に向けて大きな収穫となりました。
イギリスリバプール
Tanzhaus NRW | ドイツデュッセルドルフ
劇場やスタジオ見学のあと、運営や助成金の仕組み、講座内容など話は多岐にわたり、劇場だけでなく、ヨーロッパやドイツのダンス界の現状、環境問題などの話にも言及しました。劇場やダンスが社会的なかかわりを持つことの意義を実感することができました。
ドイツデュッセルドルフ

Das Theater Erlangen | ドイツエアランゲン
人口11 万人と丸亀市と同規模のエアランゲンで年間に子ども向けも含め6 本の新作を創作し、さらに再演や客演で年間プログラムを組むその充実ぶりに非常に驚きました。学校公演や子ども向けの演劇学校も実施、社会福祉施設と連携し、移民問題や貧困問題にも精力的に取り組む姿勢に劇場運営の理想を見出しました。
ドイツエアランゲン

Theatrehaus Jena | ドイツ イエナ
予算が少ないながらも専属の俳優をかかえ、叩き場や衣装部屋、小道具部屋など充実しており、また、近隣の若者層に愛されている劇場でした。丸亀市と同規模の市でありながら、ここまで充実した取り組みができていることに関心。同じ市にある国民劇場とは、取り組み・客層を棲み分けているのも興味深く、参考になりました。
ドイツ イエナ

◆国内の先進事例調査
特定非営利活動法人スローレーベルの活動内容をヒアリングしました。

講師:多田恵子(特定非営利活動法人スローレーベル)
対象:丸亀市産業文化部文化課職員他(参加者5 名)
開催日:2019 年12 月16 日(場所:丸亀市産業文化部文化課会議室)
テーマ:地域課題に対するアートを取り入れたアプローチについて

スローレーベルは、国内外で活躍するアーティストとともに地域コミュニティーが抱える課題を発掘し、様々な分野の専門家や、市民・企業・行政を巻き込み、マイノリティの視点から社会課題を解 決に導く取り組みをしている団体です。
まず、様々な理由で社会に出ることが難しいと感じている若者や、障がいのある人たちが、どのような悩みや課題を抱えているのか、そして彼らがアート活動に参加するためには何が必要か、どのように環境を整えればよいかについてお聞きしました。
スローレーベル
また、サーカス・アートを、教育やリハビリテーションに活かすことのできるプログラム「ソーシャル サーカス」の取り組みについてお聞きしました。普段、出会う機会が少ない障がいのある人・ない人 が、気軽にソーシャルサーカスに参加してもらい、アートを通じて互いの特徴を理解し、補いながら活動し、支え合い共創することで、地域課題を解決に導くということを学びました。障がいのある当事者・支援する側の負担を軽減するために福祉施設等と連携することの重要性についても話し合い、地域課題の解決に向けたワークショップなどを今後、開発・実施することをイメージ化することができ、有意義な時間となりました。

 

アウトリーチ・プロジェクト活動報告(2019 年度 大学における文化芸術推進事業)

◆演劇ワークショップ ~アンチ大魔王とことばバトル!~
講師:わたなべなおこ(四国学院大学非常勤講師・特定非営利活動法人PAVLIC)
対象:丸亀市立城西小学校5・6 年生(参加者6 クラス計172 名)
開催日:2019 年9 月18・19 日(場所:丸亀市立城西小学校)

◎ワークショップ内容
「何もかもが嫌いだというアンチ大魔王」を俳優の河野悟氏が演じ、児童たちが大魔王に向かって、自分たちの好きなものの魅力や好きな想いを伝えることで大魔王に自分たちの好きなものを好きになってもらいます。
チーム(5~6 人)に分かれ、各チームに「好きな学校行事」「好きな給食」などのお題が出され、チーム全員が共通する好きなものを話し合い、ひとつに絞りこみます。
一人一人が好きな理由を考え、チーム内で共有。自分とほかの人の理由の差異を知り、好きなものの魅力を皆で整理し数枚の「なぜならカード」(好きな理由を書いたカード)を作り、大魔王をどう説得するか作戦を練ります。
実際に大魔王と「なぜならカード」を使い対戦。どの順番で魅力を伝えるか、どういう言い方をすればことばが届くのか、試行錯誤しながらチャレンジします。
アンチ大魔王とことばバトル
◎参加児童の声
・普段話さない人とも話すことができて楽しかったです。
・自分と意見が違う人や自信のない人には、「一緒に頑張ろう」と声をかけて自分の心も相手の心もポカポカになって良い世の中にしたいです。
・世の中には自分と気が合わない人がいるけど、その人たちともしっかり向き合って、無視などはしたらだめだよ、というメッセージを貰いました。

◎ワークショップ実施の効果
普段、興味関心が似ている同士が集まって話をすることが多い児童たち。自分と他者との差異に気づき、たとえ同じものが好きでもその理由にも違いがある、自分と異なる他者を認め、受け入れるきっかけとなりました。


◆クリエイティブ・ダンスを用いた学校ワークショップ ~いのくまさんを踊ろう!~

講師:阪本麻郁(四国学院大学准教授)
対象:丸亀市立飯野小学校2 年生(参加者2 クラス計50 名)、丸亀市立城西小学校3 年生(参加者3 クラス計98 名)
開催日:2019 年10 月4 日(場所:丸亀市立飯野小学校)、10 月7・11・18 日(場所:丸亀市立城西小学校)

◎ワークショップ内容
色や形を観察し、それを動きに展開していく身体表現を体験します。その過程で、多くの可能性や多様性に気づき、想像力や創造力を育みます。また、自由な表現が受け入れられる場の中で他者と作業をすることで、自己肯定感を高め、相手を 尊重する心を育んでいきます。また、体を動かすこと、踊ることの楽しさを味わうことで、心身の健康も促進します。
「アイスブレイク」………輪になり自己紹介や身体を使った簡単なゲームで初めて会う人や場 所に馴染んでもらいます。
「ストレッチ・ウォームアッップ」………けがを防ぎ、思考(自己批判、他者批判)よりも先に動き出せる身体を作ります。

「インプロビゼーション」……… 猪熊弦一郎の作品「猫と住む人」「創造の街」を観察し、創造力を刺激します。

「コンポジション」………作品で気になる絵を選び、個々が気になる線や形を動きにしたものを、クラス全体でつなげることで動きのシークエンスを作り発表します。また、ペアになり二つの動きを協力しながら一つのシークエンスに作り上げ、クラスメイトの前で発表します。
「クールダウン」………輪になり、興奮を鎮めるとともにワークショップを全員で振り返ります。

◎参加児童の声
・「答えはないんだよ。」と阪本先生が言っていたので、自由に、楽しく、素晴らしいと思えるような踊りをしました。
・はじめて友達と協力して、「楽しい!」と思いました。みんなと協力できて心に残る1 日になりました。
・今日やってみて、友達が増えたし、楽しかったです。

◎担任の先生の声
・普段1 人で表現することを渋る児童が、積極的に笑顔で表現する姿が見られ、感動しました。「楽しかった」、「またしたいわ」と自然に友達と話しをしていて、どの子も達成感に満ちた表情をしていました。私自身も、交流のさせ方など、表現の授業で今後使っていきたいことが見つかり、大変勉強になりました。
・絵を体で表現するという、今までしたことのない活動を子どもたちがしていて、新しい物の見方で様々な発想ができていました。自分の知らなかった自分、友達とつながることの楽しさを味わうことのできたワークショップだったと思いました。

◎ワークショップ実施の効果
自身の身体に集中し、一人で考え、一人で動く時間と、ペアになりお互いの意見を一緒にまとめながら共同作業する時間を効果的にとることで、児童の集中力、異なる価値観を認識する力を促すことができました。普段の授業では自ら発言しない児童も、周りの目を気にせず身体表現をできており、担任の先生からは、児童の新たな一面をみることができ、ワークショップで使った手法を授業に取り入れたいという意見をもらえました。
※社会的インパクト評価レポートはこちら


◆演じて看る!? 認知症介護のスキルアップ講座

講師:菅原直樹(四国学院大学非常勤講師・「老いと演劇」OiBokkeShi 主宰)
対象:認知症介護に携わっている方、興味のある方などの一般市民(参加者47 名)
開催日:2019 年9 月10 日(場所:丸亀市飯山南コミュニティセンター、丸亀市生涯学習センター)

◎ワークショップ内容
認知症になると、物忘れや勘違いが増え、時には失敗をしてしまいます。言動を正すのではなく、受け入れることで、介護する人も、される人も今この瞬間を楽しむことができるようになります。
「将軍ゲーム」………将軍役のリーダーの言うとおりに、自分の身体の部位を指す遊びをします。思い通りにできても、できなくても共に楽しむという遊びの価値観を、介護の現場に持ち込む意義を共有します。
「イエス・アンドゲーム」……… 介護者役と認知症の人役に分かれて簡単な演劇を行います。認知症の人の突拍子もない願望に、介護者が話を合わせて「受け入れる」パターンと、否定し「正そうとする」パターンを演じ、2 つの違いについて考えます。

◎参加者の声
・悪いところばかりに目が行きがちだが、物事を忘れても「今を楽しむ」ということを大事にするべきだということに気づけました。
・認知症に関わらず、子どもや周りの人との接し方にも通じるものであり、誰に対しても相手の言動を受け入れることを意識したいです。
・これから自分も認知症になるかもしれない。家族にも知って欲しいし、もっと広がると良いと思いました。

◎ワークショップ実施の効果
介護者など周りの人がどのように関わるかが、認知症の人の感情を大きく左右することを学び、認知症への理解が深まり、楽しく介護するヒントが得られます。またそれにより、介護者、被介護者ともに不安やイライラが解消され、日々の満足度や幸福度が増していきます。また、普段何気なくしている「~するふり」をしてコミュニケーションをとることも「演技」であり、「演劇」をより身近に感じることができます。
※社会的インパクト評価レポートはこちら


◆即興演劇を用いたコミュニケーションワークショップ

講師:仙石桂子(四国学院大学准教授)
対象:丸亀少女の家職員、丸亀市産業文化部文化課職員(参加者7 名)
開催日:2019 年12 月25 日(場所:丸亀少女の家)

◎ワークショップ内容
即興演劇は自分一人では成立せず、相手の話しをきちんと聞き、気持ちや想いを理解し尊重しながら自分の想いを相手に分かりやすく伝えていかなければなりません。即興演劇の手法を用いて、コミュニケーション能力の向上を目指します。また即興演劇においては正解も間違いもなく、全員で一つの作品を作っていくので、安心して自分を表現することができます。
「他己紹介」………ペアになりお互い自己紹介をし合います。相手に対して収集した情報をまとめ、全員の前で相手について紹介します。
「二つの点」……… 二つのチームに分かれ、チームごとにまず目を書いて、一筆ずつ加えていき顔の絵を仕上げていきます。チームの人数分の顔の中から一枚選び、その顔を主人公に据え、ストーリーの設定に基づき、一つのお話を完成させ発表します。

◎参加者の声
・自分の考えだけではなく、他人の気持ちや意思を汲み取りながら一つの作品を作り上げていく過程は、正にコミュニケーションそのものだなと思いました。
・自分一人では絶対にできなかっただろうなという作品ができて、面白かったです。
・周りの人が助けてくれたり、フォローしてくれたりといった安心感の中でできる空間だったのが良かったです。

◎ワークショップ実施の効果
社会に出た後のソーシャルスキルを身につけるために即興演劇の手法を取り入れたワークショップは効果的。考えの異なる他の参加者と1 つの作品を作り上げていく過程を通して、聴く力、伝える力を身につけていきます。将来的には、現実社会で起こりうる場面を人や設定等の要素を入れて実際に演じてみることで、社会に適応 する能力を身につけることにつなげていきたいと考えています。


◆保育所 演劇ワークショップ『白雪姫』(試作)

講師:西村和宏(四国学院大学准教授)
対象:カナン子育てプラザ21/4 歳児クラス(参加者18 名)
開催日:2020 年2 月28 日(場所:カナン子育てプラザ21)

課題リサーチ・プログラムで、丸亀市立飯山北保育所・南保育所の先生方にご協力いただき、生活発表会の練習を見学・現場の声をヒアリングしました。「生活発表会で演劇的な遊びを取り入れているが、専門的な知識や方法が分からないので、芸術を子どもたちの教育にどう結びつければよいのかを知りたい」などのお悩みを伺いました。そこで、ドラマを使って子どもたちが自ら考え、 感じたことを表現して楽しむことができるワークショップを開発することにしました。

◎ワークショップ内容
「あいさつをしよう」………子どもたちが一人ひとり舞台に上がり、舞台上にいる白雪姫に挨拶をします。まずは人前に出て、何かするということに慣れてもらいます。
「かいわする」………白雪姫か、いのししと一人ひとりが舞台上で会話してもらいます。
「えんじる」………子どもたちが継母役や鏡役になり、自らが考えたセリフを舞台上で話してもらいます。
「こびとやくになる」……… 子どもたち全員が小人役 になり、みんなで音楽に合わせて踊ります。全員で何か表現することを体験してもらいます。
「いのししを助ける」……… いのししが間違えて毒リンゴを食べてしまったのでみんなでいのししを助けます。

◎ワークショップ振り返り
子どもたちは衣装・メイクをした白雪姫やいのししに興味を持ち、キャラクターと舞台上でのやりとりを楽しむことができました。人前でしゃべることに慣れていない子も、友達やアシスタントの助けを借りて、言葉(セリフ)をいうことができました。将来的には、みんなと同じセリフではなく、個々が考えたセリフを友達の前でしゃべれるようになり、達成感を得ることで自己肯定感を高めてもらうことが目標です。子どもたちの自由な発想を引き出せるようなゲーム的要素やアイテムを追加し、自分なりの表現をすることに喜びを感じられる段階を踏んだプログラムを用意するなど、ブラッシュアップをしていき、子どもたちの想像力・表現力を磨けるワークショップを創り上げたいと思っています。

 

シアター・プロジェクト活動報告 (2019 年度 大学における文化芸術推進事業)

開催日:2020 年2 月8 日~9 日 (場所:四国学院大学ノトススタジオ)
対象:丸亀市産業文化部文化課職員、大学生(参加者15 名)

◆劇団「渡辺源四郎商店」2 本立て公演
青森を拠点にする劇団「渡辺源四郎商店」を招聘し、2 作品を上演。
プロの劇団の公演運営に参画し、上演に関する渉外、宿泊・ 移動の手配、チラシ作成などの制作実務を実践的に学びました。
『どんとゆけ』 作・演出:畑澤聖悟
どんとゆけ
『だけど涙が出ちゃう』 作・演出:工藤千夏
だけど涙が出ちゃう
◆高校生演劇ワークショップ

講師:畑澤聖悟(四国学院大学非常勤講師)
対象:高校生(参加者21 名)
開催日:2020 年2 月7 日 (場所:四国学院大学ダンススタジオ)

公演に連動して高校生対象に演劇ワークショップを開催。演劇の楽しさを地域の高校生に改めて実感してもらうと同時に、卒業後も演劇というアート活動を続けていきたいと思ってもらうことができました。
高校生演劇ワークショップ""

◆アートボランティア
開催日:2020 年2 月8 日 (場所:四国学院大学ノトススタジオ)
対象:高校生(参加者3 名)
ボランティア参加者は、ロビーや外壁への装飾、配布物へのチラシ等の折り込み作業、劇団側との公演事前ミーティングに参加しました。観客とは違う立場でプロの劇団公演に関わる機会となりました。
アートボランティア

 

評価・プロジェクト活動報告 (2019 年度 大学における文化芸術推進事業)

本プログラムで、実施したワークショップや公演を活動ごとに振り返り、アンケート調査・ニーズ調査の結果を踏まえながら、地域にどのような影響を与えたかについて考察しました。また、市民会館の開館に向けて、市民や企業に対してアートや劇場の必要性を理論的に説明する方法を学びました。

◎社会的インパクト評価について
丸亀市は新市民会館開館に向けて、文化芸術が社会に与える影響を様々な視点から分析することによって、文化芸術活動が生み出す社会的価値を可視化し、検証する「社会的インパクト評価」を取り入れています。本プログラムでも、アウトリーチ事業が社会に対してどんな影響を与えるのかを定性的、定量的に評価し、投資に対する妥当性を検証していくと同時に事業のロジックモデルや効果の見直しも行っています。当プログラムで作成したロジックモデルとそれを基に収集したアンケート結果は下記をご参照下さい。

◎社会的インパクト評価レポート
「クリエイティブ・ダンスを用いた学校ワークショップ ~いのくまさんを踊ろう!~」(PDF)
・ロジックモデル
・事前アンケート、終了時アンケート、事前アンケートと 3 か月後アンケート比較
課題解決ワークショップ<認知症介護のスキルアップ講座>(PDF)
※本評価レポートには、丸亀市文化課市民会館開館準備室 主催事業も含まれています。
・評価プロセス
・評価対象ワークショップ(概要)・(詳細)
・現状把握(市役所職員への事前ヒアリング)
・(菅原直樹氏への事前ヒアリング)
・ロジックモデル
・評価指標(参加中~初期)(中期~最終)
・測定 ・事前アンケートの測定結果①②
・当初想定された課題(事前アンケートより)
・終了時アンケートの測定結果①②
・WS の成果と課題(終了時アンケートより)
・測定結果の事前事後比較①②
・WS 実施前後の変化
・現在の状況①②(事後アンケートより)
・現在の状況(事後アンケート)から想定される課題
・今後に向けた可能性と改善策

四国学院大学における新型コロナウイルス感染症対策の基本方針

公開日 2020年11月11日

四国学院大学コロナ対策本部長
学長 末吉高明

はじめに

新型コロナウイルス感染が発生して以来、本学は、4月20日「学長メッセージ:緊急事態宣言に対する四国学院大学の対応と指針」の公開を初めてとして、学生向けおよび教職員向けの「新型コロナウイルス感染症への対策について」は、3月以降、適宜改訂を行い、11月4日には第14版を公開している。また、教職員を対象とした新型コロナウイルス感染症に対する「教職員行動指針」もまた、11月4日に第12版を発出してきたところである。
以上のような、四国学院大学における新型コロナウイルス感染症の対策については、4月に設置した「四国学院大学新型コロナウイルス感染症対策本部(以下、「対策本部」と略)」を中心に、新型コロナウイルス感染症への対策方針を決定してきた。例えば、4月の授業開始時期の策定、遠隔授業の基盤整備と展開などの諸決定など、急激な感染症の拡大に適切に対応するための措置の策定などであった。
その後、新型コロナウイルス感染症は、全国的には一定の鎮静化の状況に落ち着いてきたようになっていたが、感染の完全な収束には至らなかった。しかも、10月に入って以降、気温の低下に伴い、感染の拡大が散見できる状況になっている。これら総体状況を踏まえつつ、4月以降の「対策本部」の議論の蓄積(「新型コロナウイルス危機対応SGU教育継続計画Ver.2.0(案)」等の策定)を勘案して、今後の四国学院大学の新型コロナウイルス感染症対策の基本的な対応方針を次のように確定することにした。

1.対策の基本方針
対策の基本指針として次のことを決定する。

冬季に向けて、これまでの「SGU教育継続計画」を前提にしつつ、現状を勘案して新たに「四国学院大学における新型コロナウイルス感染症への対応指針(「SGU教育継続計画」改訂版)」を策定し、大学の感染防止の方針をより一層明確化する。

  1. ①「対応指針」は、本学の学生、教職員及びその家族の健康・安全を確保することを第一義的に考え、新型コロナウイルス感染症の拡大(感染リスク)防止を目的とする。
  2. ②「対応指針」は、感染リスクの防止を最大の目的として設定するが、その対応において本学の学生、教職員の基本的人権を阻害(社会的リスク)することがないように最大限留意する。
  3. ③四国学院大学は、建学の精神から、コロナ感染の防止と同時に、コロナハラスメント防止に取り組み、香川県『NO コロナハラスメント』啓発キャンペーンに賛同している大学としての立場を堅持し、感染の個別具体的な状況に関しては、必要以上に公表することはしない。

2.四国学院大学における新型コロナウイルス感染症への対応指針(「SGU教育継続事業計画」改訂版)について

詳細に関しては、別紙の「四国学院大学における新型コロナウイルス感染症への対応指針(「SGU教育継続事業」(改訂版)」を参照のこと。
なお、「「SGU教育継続事業」(改訂版)」における制限レベルは、感染状況の日々の変化が大きいため、概ね、2週間を単位として感染状況の確認を行い、その都度、必要に応じて変更等を行っていく。

以上

「SGU教育継続事業」(改訂版)

「SGU教育継続事業」(改訂版)

「SGU教育継続事業」(改訂版)」における制限レベル

「SGU教育継続事業」(改訂版)」における制限レベル



学長メッセージ:対面授業開始に向けて

学長メッセージ:

対面授業開始に向けて

公開日:2020年5月25日

学生ならびに保護者・保証人の皆さまへ

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、本学は、4月20日に全て授業を遠隔授業で開始いたしました。その後、ご存知のように、5月14日には、香川県を含む全国39県で、緊急事態宣言が解除されました。続いて、5月21日には、近畿3府県での緊急事態宣言が解除されています。そして、現在、香川県は、<感染観察都道府県>1 に該当し、かつ、『学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル』による<レベル1> 2、すなわち、教育活動を「十分な感染対策を行った上で実施」するカテゴリーに入っています。
このような香川県の状況も踏まえて、本学は、5月14日付副学長文書『対面授業の開始について』でお伝えしました通り、来る6月1日月曜日から対面授業を開始いたします。ただ、全ての授業を対面授業で行うわけではありません。感染防止のため、原則として、履修者100名以上の授業は、これまで同様、遠隔授業を継続し、100名未満〜50名以上の授業は、個別授業の内容等を勘案して遠隔授業を継続する場合と対面授業を開始する場合があります。また、履修者が50名未満の授業は、原則的に対面授業で行います。さらに、学修の利便性を勘案して、対面授業を開始した授業においても授業の必要に応じて遠隔授業方式(学内ポータルサイトや学内LMSなど)を活用したハイブリッドな運用方法も考えていきます。対面授業を開始する授業等に関しては、別途、連絡しますので、必ず確認をして6月1日以降の授業の準備をしてください。

ところで、周知のように感染拡大の第2波の到来も充分予測されますので、本学ホームページならびに学内ポータルを中心として既に通知されている諸事項と今後掲載される関係文書や学内での広報を精読して、三密回避、マスクの着用、手指消毒等を含む感染防止のためのルール実践を強力に推進してください。

なお、この間の経済的状況の悪化に関連して学業維持が困難になった学生のために設けられた公的および本学独自の奨学金サポート制度があります。受給には、諸条件をクリアする必要がありますが、新型コロナウィルス感染拡大と防止施策に起因して、経済的援助が必要となった方は、学生コモンズ支援課に連絡を取ってください。

では、あらためて、皆さんと6月1日から本学キャンパスでお会い出来るのを楽しみにしております。

学長 末吉高明

 

 


1「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(5月14日)」(新型コロナウイルス感染症対策専門家会議)https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000630600.pdf
2 学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル』p.7参照
https://www.mext.go.jp/content/20200522_mxt_kouhou02_mext_00029_01.pdf

2020 年度準会員会費納入のお願い

2020年 4月 1日

四国学院大学文化学会準会員各位

四国学院大学文化学会

会長 丹羽 章

2020 年度準会員会費納入のお願い

拝啓 時下ますますご清祥のことと存じます。日頃より、文化学会の活動をご支援いただき、心より感謝を申し上げます。さて、引き続き2020年度も準会員として、下記のとおり、会費の納入をいただければ幸いでございます。なお、準会員の方には本学『論集』をお届けいたします。また、『論集』に執筆していただくことができます。郵便振替用紙を同封させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

敬具

会費名: 四国学院大学文化学会 準会員会費
金 額: 年額 2,500円
振込先: 四国学院大学文化学会 (振替貯金 01660-6-29064)

四国学院大学ノトススタジオ運営業務委託者の公募について

四国学院大学ノトススタジオは、2011年に中四国初の本格的演劇コースとしてスタートした、身体表現と舞台芸術マネジメントメジャーの学びの場としての役割に留まらず、地域の劇場として機能しています。
このたび、ノトススタジオでの舞台芸術公演及び授業やワークショップの業務全般に携わっていただける業務受託者を募集いたします。

委託業務の概要
・稽古・公演・ワークショップでの技術面全般のサポート
・ノトススタジオ設備・備品管理(メンテナンス)
・広報活動
・公演当日の運営
・本学の学生で構成する「ノトスプロダクション」に対する技術的アドバイス(照明・音響・映像機材全般)と教育的指導
・外部利用団体との渉外
・身体表現と舞台芸術マネジメントメジャーの授業サポート(授業準備・講師送迎等)

必要資格
普通自動車運転免許(AT限定可)
足場の組立て等作業従事者特別教育修了者が望ましい。

委託費用(委託上限額)
年間3,000,000円

委託期間
業務締結日(2020年4月1日予定)から2021年3月31日

提出書類
・履歴書および関連業務にかかる経歴書
・団体の場合は団体の概要が分かる資料、代表者の履歴書、関連業務にかかる実績を記した書類

応募締め切り
2020年1月31日

書類提出先
〒765-8505 香川県善通寺市文京町三丁目2番1号
四国学院大学 総務課 ノトススタジオ運営業務 係

お問い合わせ先 (迷惑メール防止のため@ を “at”に置き換えています。)
質問等は、soumu”at”sg-u.ac.jpまでメールにてお願いいたします。

ノトススタジオについては、http://www.notos-studio.com/about/をご覧下さい。

演劇コース学生座談会


高橋:皆さんは高校時代に演劇の全国大会に出場した経験があるということで、いろいろお聞きしたいと思います。高校の演劇部ではどんな活動をしていましたか、始めたきっかけは?
太田:私は高校受験の時点では演劇をやろうとは思っていませんでしたが、姉が演劇をやっていて、ちょっと面白そうだな、やってみようかなと思ったのがきっかけです。もう運命だったと思ってるんです。想像していたのとはいい意味で違い、全国大会はもちろん、例えば被災地での演劇公演や、他県他市の中高生とのワークショップなど、いろんなところに行かせてもらいました。
高橋:堀君も同じ青森出身ですね。
:僕は子どもの頃から自己顕示欲強めで、親戚の前で歌っちゃうような目立ちたがり屋。演劇にも興味はありましたが、高校に入って「演劇ってすごい!」と思ったんです。言いたいこと、やりたいことを台本を通じて舞台上でやれる。しかも俳優さんはこれでご飯を食べてる。すごく楽しいと思いました。楽しくて趣味にしていたことを、そのまま大学で勉強している感じです。
江島:僕は舞台に立ったのがきっかけ。中学校の文化祭で、それまでは合唱コンクールだったのがその年は演劇をすることになって、主役で立たせてもらったんです。舞台に立っている時、日常とは少し違う自分になれたというか…抽象的ですが、魅力を感じました。そこから高校に進学して演劇部で3 年間演劇活動をしました。ただ楽しくやっていた中学時代とは違い、だんだん総合芸術と言われている所以、つまりいろんな要素の詰め合わせだということがわかってきました。ただ舞台に立つ人がいればいいわけではなく、お客さんはもちろん、照明とか、音響とか、いろいろ組み合わせて一つの作品になるのが奥深いなと。ますます研究したくなって今も続けています。
高橋:どんな演目をやっていたの?
江島:人の人生に関わる演劇が多かった気がします。たとえば今の我々が、明日親が死ぬとか言われてもわからないじゃないですか。でも劇の主人公は、お母さんがガンで倒れてるところから始まったりする。体験したことがないものを演技でやれと言われても、いきなりはなかなか難しいんです。人の道徳的なところ、たとえば家族の死とか、普段考えないようなところを考えさせられましたね。
大平:僕は進路を考えた時、中学校の時にやりたいことが本当になかった。どうしようと思っていたところ、「演劇をやりたい」とビビッ!ときたんです。香川県出身なので、香川で有名なところに行こうと思って、ネットで検索して一番上に出たので…。適当な選択じゃなくて、検索の一番上に出て、ちゃんとブログとかも上げてるということは、きちんと取り組んでいるんだなと思ったからです。演劇部に入って舞台に立つうちに、役者の台詞や音響、照明、何かのきっかけでハッと場内の空気が変わる瞬間がすごく好きだと気付きました。飽き性ですがやっと継続できることが見つかって、今もまたあの快感を味わえるのがありがたいなと思います。
高橋:香川の演劇の傾向ってあるの?東北や青森だとやっぱり震災のことが多くなるんだけど…
大平:どこもそうかもしれないけど既成作品が多くて、四国だと越智優さんの作品をよく見かけますね。
:菊池寛さんも四国じゃなかった?
大平:香川の人だよ。
太田:今年、香川菊池寛賞をうちの大学の学生が受賞したニュースもありましたよね。
大平:香川の傾向というと、例えばうちの高校では「本気でふざける」と決めて、テーマはめちゃくちゃ重くても「重い舞台」にしない工夫をしたり…割と明るいかな、全体的には。
宮地:私が演劇を始めたのは高校の演劇部ですが、やりたいなと思ったのは幼稚園くらい。瀬戸内海の島出身で、少子高齢化のまちなんです。人数が少ないから、中学校は運動部に入るのは必須で、かけもちじゃないと文化部に入れなかった。しかも茶道部と華道部しかないんですよ。ずっと演劇ができなかったのが溜まって溜まって、受験の時に爆発。もう家出てやる!と言って、叔母のところに住まわせてもらいながら広島市内の高校に行きました。うちの高校は香川と反対で重たい演劇が多くて、母校はもう50 年くらいずっと原爆劇をやっています。やるかやらないかは毎年顧問の先生と相談しますが、私の時もやることになりました。それで全国大会に行って。
堀・太田:見た見た!
宮地:私が1 年生の時に戦災孤児の話、2 年生の時は、ざっくり言うと「恋人になるはずだったお父さんの愛人が戦争で亡くなる」という話をやりました。県大会の時に西村先生に審査員をしていただいた縁もあって、この大学を選びました。高校では部員もいなかったので、8 人くらいで23 役とスタッフを全部回したりして…スタッフはみんな一通りできる高校でしたね。てんてこまいで、ずっと部活のことを考えている演劇漬けの高校生活でした。
青木:私は島根県の高校なんです。
宮地:年代はかぶってないですけど、中国大会とかでよく…。
青木:そうそう、お互いよく知ってる高校です。
高橋:高校から演劇を始めたんですか?
青木:演劇という言葉の定義によりますね、お遊戯会とかも演劇と言えば演劇じゃないですか。そう考えるとすごく小さい時から舞台で「演じ」てきました。もともと目立つのが好きだから、人前に立って話すのも好きで、小学校の劇なんかも他の人は嫌がるのに私は「やりたいです!」って。ある日テレビをつけたら、たまたま「青春舞台」をやってて、たまたま自分が通うことになる高校が出ていたんです。初めて今まで自分がやってきた劇よりもずっとレベルの高いものを見て、めっちゃ感動しました。テレビの向こうにいる人たちもこうして感動させられる作品をつくっている高校ってすごいなと思って、絶対この高校に行こうと思いました。高校2 年生で全国大会へ。賞こそ取れませんでしたが、「めちゃめちゃよかったです、僕は一番だと思います」って、しかもわざわざ走行中の車から窓を開けて言ってくれた人もいて、やっててよかったなと。もっと勉強したらいろんな作品がつくれる、かかわれるんじゃないかと思って本学を選びました。大学では演技以外の勉強もできているのがいいと思います。続けてよかったと思っています。
高橋:私はずっと演劇をやりたかったけれど中学校にはやれる環境がなくて、高校では絶対に演劇部に入りたいと思いました。地元に演劇学科のある高校があることを祖母に聞いていたので、そこを受験して、演劇部で演劇漬けの毎日でした。高校宮3 年間は「震災が起こってしまった後の人間関係」などの震災劇が中心。ものすごく楽しい演劇ではありませんが、人の気持ちを考え、演劇で人を元気づけることができるのかを考えたことが、演劇を続けていこうと思った原点だと思います。自分やみんなの思いをそのままにはできない、演劇の勉強を深めようと大学進学を決めました。東京の演劇系大学も調べましたが、何となく魅力を感じなくて…。四国学院大学は少人数制で、一人一人と密接に関われるところに惹かれました。
では皆さん、ズバリ、演劇の魅力とは?
:大きな舞台を演じ切って息も切れている状態で、お客さんから万雷の拍手をもらえる時の恍惚感、それが一番記憶に残っている魅力ですかね。
青木:やっぱり「生」ってところじゃないですか。生で演じ、生で見られるところだと思います。
宮地:合法的に嘘がつけるところ。嘘をついても誰にも怒られない世界で面白い。
江島:手を伸ばせば届くような距離で、生身の人間が本人とは別の人格を演じている、その矛盾している空間に取りつかれました。
太田:つながりがあるところ。舞台上の登場人物もつながっているし、お客さんが反応してくれるとそこにもつながりを感じるし、終わってから「よかったです!」という人たちとの出会いも経験できるすごいものだと思っています。
大平:僕みたいに何もやりたいことがなかった人間が、作品を掘り下げていくうちに何かに出会えるのはすごくいいことだと思います。
高橋:みんなが言うこともすごくわかる。私もいろんな人と出会えることかな。
では次の質問、演劇を通して皆さんが身についたことは何だと思いますか?
青木:コミュ力は高くなった気がする。
大平:いろんな役柄に触れるので、心が広くなったと思う。
高橋:私は一人でも大丈夫になったこと。高校の時は演劇やってる人が周囲に少なくて、「演劇恥ずかしいじゃん」みたいな視線を浴びても平気なほど強くなったと思います。あと明るくなりました!
:僕は「嫌い」をなくそうと思いました。できるだけいろんなものを好きだと思おうと。俺の領分じゃないから嫌だ、というものをつくると演技の幅も狭まるから、寛容でありたい。
江島:自分をわかったというか、「自分をわかる」ということが身についたというか。演技する上で、役柄が体験していることと自分が体験したことは違うので、そのギャップをわかった上で演技しているんですけど、日常生活でも自分のことをわかろうとする姿勢が、演劇を通じて身についたと思います。
宮地:私は逆に、人を頼ることと、「誰かがやる、では誰もやらない」を学びました。自分でやって自分がつぶれたら意味がないから、もっと他の人を頼っていいんだなと。
太田:人とつながることが大切だという実感と、あとは人を良くも悪くも見るようになりました。観察眼というか、「今こういうことを考えてるのかな?」と想像するんです。演劇脳なのかな。それと、人とつながっていればその分チャンスも回ってくることが、特にこの大学に入って感じた部分です。見聞を広める意味でも、演劇人はつながりを大切にしないといけない。

高橋:大学ではどんな公演に参加しましたか?自主公演はみんな出た?
太田:コンテンポラリーダンスの公演は1 年生全員参加したことがないと思う。あと主に子ども向け演劇が多かった気がします。
高橋:白雪姫はみんな出たよね。あとはSARP※1。
※1 SARP(サープ)四国学院大学アーティストインレジデンスプログラムの略称で四国学院大学の身体表現と舞台芸術マネジメントメジャーが主体となって制作する公演の名称。毎回プロの演出家・振付家が大学内の宿泊施設に滞在し、学生キャスト・スタッフとレベルと高い舞台作品を創作し上映することを目指す。
宮地:SARP はこのメンバーみんな何かしら関わってますね。
太田:出たのは男子組3 人だね。高橋:SARPvol.13『カスケード~やがて時がくれば~』に出てどうでした?初めて演出家についてもらった演劇だと思うんですけど、演出の松井周さんの指導はどうでしたか?
江島:つらかった…(笑)
青木:演出っていう感じじゃなかった気がしない?割と自分の素でやったというか。
高橋:松井さんが私たちの個性に配役をぴったり当ててくれたというのもあって、あまり無理がなかった気がしますね。新しい自分を発見して、私もまったくやったことがないキャラクターを演じて楽しかった。高飛車な役だけど自分に妙にハマって、作品も好きになりました。一体どういうところがつらかったの?
江島:自分のままで舞台上に放り出された気分になったのがつらかったんですよ。松井さんのおっしゃることが理解はできるのに、自分はできない。そういう演出に慣れてないのも一因です。でも、ありのままの姿を舞台上に出すというのは貴重な経験ですから、つらかったけど得るものも大きかった。
大平:僕は演出家の役をさせてもらって。もともと演出も手掛ける岩松了さんが書いた脚本を、松井さんが演出して、その中の演出家の役をやるというのはプレッシャーがすごかった。でもすごく楽しかったし、松井さんという身近なサンプルがいらっしゃったので、小さな仕草や考え方の流れをくみ取っていくのが面白かった。ありのままやるからこそ、絶妙に嘘と本当のギリギリのところを通っていく感じがありました。
宮地:松井さんのストーカーみたいだった(笑)
大平:ポテチを食べる松井さんや自販機で飲み物を買う松井さんの仕草を真似してやったら、引かれました(笑)
:僕の役はまあ、変態ですよね。なかなかハマってたと思うんですけど、ずっとキャラをつくって演技するという方法だったので、キャラをつくらない、素でやる、直感的にやるということに最初は慣れなくて、どうしたものかと…
高橋:何回もダメ出しされてたよね。
:でも途中から、キャラじゃなくて、素の自分でやってていいんだと思えるようになってきた。舞台の中で自分を許せる感じがありましたね。
高橋:四国学院大学に入って、高校演劇との違いは感じますか。
:高校の時は、先輩から継いできたものをいかに質を落とさずやるかが重要でした。大学は、演技プランを1 から10まで自分でやるというか、演出家の先生に「私はこう思うからこうやる」とプレゼンする形態で、これなかなか面白い!と思いました。
大平:大学に入って、生々しくきれいごとじゃない劇に触れる機会が増えましたね。高校の時にやっていた演目には展開に現実味のなさを感じることもあったのですが、大学のお芝居はちゃんと「人が舞台上でちゃんと生きている」という感覚があります。
高橋:先生に言われて印象に残っている言葉や指導方針はありますか?
青木:最近「みんなでシーンをつくる」という自主練をやってるんです。既存のシーンをもっと深めていく自主練なら経験がありますが、自分たちでシーンを考えてつくるというのは初めて。びっくりしました。
高橋:逆に私は高校の時は、エチュードをみんなでつくって重ねていって作品にする創作劇ばかりでした。大学に入って初めて戯曲をやったら西村先生に「下手だね!」って言われて(笑)
宮地:うちの高校は自分の演技の目的を自分で説明できないといけない、何もないままやってはいけないという指導でした。自分たちがどう思うかを大事にしてくださる先生だったので、松井さんの演出にもすごく親しみを感じました。
太田:私は高校3 年生で最後にかかわった作品でいい役をやらせていただけたんですけど、台本が少しずつ渡ってくるんです。ある時台本に「♪」が入っていて、歌詞みたいなのが並んでいる。「どんな曲ですか」って先生に聞いたら「自分で作ってよ、お前ならできる」って言われて。先生の本に私たちが合わせていくイメージだったんですが、最後になって私の持っているものを引き出してくれました。その経験を踏まえ、大学で素を出すことを学びながら、また違う自分の「素」を見つけたいなと思います。

高橋:四国学院大学で演劇を学ぶメリットは何でしょう?
太田:のびのびできること。都会だと「もしかしてスカウトとか来るんじゃない?」みたいな、変なプレッシャーがありそう。ここではそういうのを感じないし、かといって東京に行こうと思えばすぐに出て行ける。自由にやれるのがいいところです。
高橋:自分が東京に行かなくても、プロの講師の人たちもいっぱい来てくれて、他の大学ではやってないようなワークショップもできるのがぜいたくですよね。ワークショップ開いてない演出家の人が教えに来てくれたり。
:周りに何もないから、逆に勉強に集中できる(笑)。施設も整っていて、自分の好きなものに専念できるのは、他の演劇系の大学にはないところかなと思います。
大平:出会いがあって経験できる場所があって自由さがあるというのはすごいことですよね。
高橋:ノトプロ(ノトスプロダクション)とかもあって、スタッフもがっつりやれるし。
青木:高校の時って、ポスターやパンフレットをつくる機会もないよね。
高橋:ここは制作の授業がありますしね。私は役者中心で制作の仕事をあまりやってないんですけど、どんどん同級生が制作のプロフェッショナルになっていってすごいと思う。
太田:その人の行動力にもかかってますけど、自分が「やりたい」といえば何でもやれる環境が整っています。新入生は不安もあるだろうけど、そこを少し踏み出す勇気があれば何でも可能性が広がるから、積極的に来てほしいですよね。
江島:「演劇に興味はなかったけど、演劇を目にする機会があるからやってみた」とか「役者をやってたけど照明をやってみたらすごい向いてた」という先輩方もいらっしゃるし、自分の好きなことを発見できるというのも魅力です。
高橋:お金的にも都会に比べて住みやすいし。
太田:物価が安いし、アルバイトの時給も高いし!暮らしてても困ることはないと思う。

高橋:1年生から私たち先輩に聞きたいことはありますか?
宮地:2人とも香川県外出身ですけど、私は広島から来て、方言の違いに戸惑うこともありました。演劇をやっていても、意思疎通に困ることはありましたか?
青木:演じている時は何となくわかる。台詞のイントネーションについては今もお互い「あれ?」ていう瞬間はあるかな。
高橋:東北とこっちの言葉は全然違うからわからなくて、いつも聞き返したり意味を聞いたりしてました。今ではもうネイティブレベルで喋れますよ(笑)
太田:私たちは1 年生の時から結構かかわってきた方だと思うんですけど、先輩はいつ頃から「演劇コースに関わってみよう」と本格的に思ったんでしょうか。入学すぐですか?
高橋:私は1 年生の時のSARP が5 月にあって、それを受けてから。コンテンポラリーダンスで、「コンテンポラリーって何?」というレベルだったけど、演劇コースに入ったからには1 年生からやろうと思って頑張ってやりました。
太田:一番最初がオーディションってすごいですね。
高橋:入学してこんなにすぐやるんだとびっくりした。演劇の回数も多いし、チャンスはいっぱいあると思う。皆さんは演劇コースで学んで将来やりたいことはありますか?
大平:職業にかかわらず、いろんな人と出会っていくことは大切にしたいと思います。
太田:具体的な職業は私も決まっていないけど、せっかくここで学んでいるので、演劇のスキルやコミュニケーションを生かせる仕事に就きたいと考えています。
江島:俺は佐賀に帰ろうと思います。佐賀は演劇があまりないので、ここで学んだスキルを持って帰って、地域演劇に貢献できれば…。演劇は素敵なので。
高橋:私は今ちょうど就活と悩んでいる時期ですが、やっぱり演劇はやめたくない。何らかの形でかかわりたいですね。演劇を生かしたいし、地域と演劇をつないでいくことも考えていきたいところです。
宮地:私も演劇は絶対続けたい。2 年生からは学芸員の資格を取れるコースを履修する予定です。
劇場でも学芸員の資格を生かせるチャンスがありますし、将来自分のやりたいことにつながればいいかなと思います。
青木:私も最終的には地元に帰って…と思いますが、20 代のうちだからこそ、都会や香川でもう少し勉強してから地域活性に目を向けたいですね。
:いずれは役者でご飯を食べていきたいと思います。東京で目指すのもいいけど、青森に戻って身につけた演劇スキルを演劇教育に使っていくのもいいんじゃないかと。
高橋:では、演劇初心者、未経験者にメッセージを。四国学院ウエルカムな感じを出していきましょう(笑)
太田:ほんとにウエルカムですよ。青森から出てきてよかったと心底思う。知らない土地に対する不安はあるだろうし直面する壁もあるけど、それもまた生かせる可能性があると気付けたのもよかった。大学から演劇を初めてもまったく遅くないと思うんです。
高橋:そういう人もいっぱいいるよね。演劇をがっつり目指す人もいれば、学校の教員を目指す人もいるし、それぞれ実になる。
大平:演劇と疎遠な人にとって、演劇という言葉は重く感じるかもしれませんが、きっかけは何であれ出会えることが大切。大学で新しい生活にが始まるついででもいいので、演劇に触れてみれば、人生豊かになると思います。
青木:劇場が近くにあって、学生だととても安く演劇を見ることができるじゃないですか。
高橋:学生だと500 円です。
太田:ものによっては無料!
青木:そういう環境だから、友達が出ているからとか、どんなきっかけでも、足を運んでほしいですね。
:演劇に限らず文化、芸術、そういうものに触れるのは自分の心を豊かにしてくれるところもいいと思います。
高橋:学外からのお仕事もたくさん来ますよね。一番魅力的かもしれない。さぬき映画祭では、本学の講師でもある本広克之監督にすごくバックアップしていただいたり…。ボランティアスタッフとしてたくさんのプロの方とかかわれるのもいい。そこで育んだつながりを生かして都会に出るもよし、地元で頑張るもよし。
太田:瀬戸内国際芸術祭はまだ経験してないんですが、私は本学の学生ならリーズナブルに参加できる「フェスティバル/トーキョー」のワークショップに行きました。年1 回の大きな演劇・ダンス・アートイベントです。トップレベルを含むさまざまな演劇人たちと出会えました。そういう情報も演劇コースにいれば入ってくる。1 年生も興味があれば私たち先輩に聞いてみてほしいし、何でも相談に乗るので、いつでも声を掛けてください!