『私を変えた、二ヶ月間』(演劇)

社会学部(演劇コース)2016年度卒業
太田久美子さん

期  間:7月29日~9月27日
場  所:東京都(こまばアゴラ劇場)、兵庫県(城崎国際アートセンター)
活動内容:インターン(高校演劇サミット、「MONTAGNE/山」など)

インターンに行こうと思ったきっかけは何ですか。

――平田オリザ先生から、インターンの話をいただいたことです。私は、演劇コースで制作を担当しています。制作について、4年間演劇コースで学んできたことを活かしながら、新しいことを学びたい! と思い、インターンに参加しました。

インターンではどんなことをしましたか。

%e9%bb%84%e3%81%8f%e3%82%93img_3165――最初の1週間は、東京のこまばアゴラ劇場で高校演劇サミットに参加し、公演の受付等の手伝いをしました。高校演劇サミットでは、高校生に対して、舞台を使う時の注意点や音響や照明、制作など一通りの説明がありました。高校の演劇には制作というポジションがないみたいで、制作の仕事について伝えるためのものでもありました。このサミットで、制作以外の音響や照明についてもある程度知っていたらもっと楽しいだろうな、と思いました。一応、大学のノトスプロダクションに3年まで所属していたのですが、私はやはり制作がしたかったので、音響や照明など舞台の仕込みにはあまり入っていませんでした。でも今回、実際に経験してみて、光の力とか音の力というのは、舞台を引き立たせるもののひとつなんだな、と実感しました。ドアを開ける時、「ガラガラ」というドアの音と役者が手をつけるだけでそこにドアがあるかのように見えたり、照明によって、異変が起こったことを表現することもできます。様々な照明の色や、スモークマシンを使うと光が舞台上でどのように見えるのか、といった演出方法なども見せてもらいました。今まで授業でさらっと聞いていたので知識としては知っていましたが、改めて実際に見てみると「なるほど」と理解できる部分が多くありました。次の約1ヶ月半は、兵庫県と東京で青年団とフランス人演出家トマ・キヤルデによる日仏の国際共同プロジェクトで上演される『MONTAGNE/山』という作品に関わらせてもらいました。この作品は元々フランスで上演されていた作品で、日本で上演するために台本を書き直すところからはじまりました。滞在制作が兵庫県の城崎国際アートセンターで行われ、リサーチ期間の1週間は、日本らしい台本に書き換えるため、山に関係する人に話を聞いたり、お寺の住職さんに話を聞いたり、植村直己の冒険館に行ったりしました。私は今まで山のことを知らなくて、リサーチから関わったことも初めてだったので、知らない世界をたくさんみることができました。たとえば、山へ入る時は、山に挨拶をすること。それは、自分が今から山に入ることを知らせるためだったり、動物たちに人間が歩いていることを知らせるためだったり、自分の身を守るためだったりするようです。山への挨拶という些細なことから、植村直己の生涯のことまで様々な話を聞いて、山って深いんだなぁと感じました。
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実はこの作品、フランスで上演した時は野外公演として、実際に山で上演されていたんです。でも、焚き火のシーンもあったので、日本で同じように山で上演することは厳しく、その舞台をどう再現するか、ということが話し合われました。劇場に木材を立てても、劇場は劇場にしか見えないので、岩は三角の厚紙に「岩」と書いたり、火も赤い紙に「火」と書く、といったようにすべてを紙で作ることになりました。私も一緒に小道具の制作に参加させてもらったんですが、俳優さんがどうやったらスムーズに演じられるのか、ということを考えていたので、これも作品づくりのひとつになっているのだなと感じました。

学びたかったことを学ぶことはできましたか。

――今回、制作以外の様々なことを知り、学ぶことができました。そして、滞在制作の難しさ、外国人の方との共同制作の大変さを知りました。コミュニケーション面でも、通訳の方もいましたが、日常会話など英語がしゃべれたらもっと話せたのにな、と思うところがありました。
いつもノトススタジオで公演がある時は、制作としてやらなければならないことがたくさんあったので、稽古場にずっといて、稽古の様子を見る、というのも今回が初めてでした。制作として何かをつくるとかではなく、作品が徐々に出来上がっていくのをみるのがとても面白かったです。
今回のインターンでは、知りたい、と思っていたこと以上に知れたことが多かったです。
たとえば、チラシ配りではある程度やることは決まっていて、プラスどうしたらいいか、ということを後輩たちと話をしていたんですけど、城崎国際アートセンターの方とチラシ配りに同行させてもらった時、私たちの課題が見えてきました。私たちもチラシ配りに行く時は、ご飯処ではご飯を食べてチラシを渡すようにしているんですけど、城崎国際アートセンターの方は店の人たちに「いつもありがとう」と言われていて、その関係性の深さや距離の近さが違っていました。やっぱり、チラシを渡すためにお店に食べに行く、というのでは駄目で、いつも食べていて公演がある時にそれを会話の中で伝えられる関係って素敵だなと思います。

今回の経験をこれからどう活かしていきたいですか。

―― 一つは、今回の「MONTAGNE/山」という作品に関わってみて、外国に行って、外国で作品をつくってみたいと思うようになりました。そのためにも、もう一回英語を勉強しようと思います。
もう一つは、こまばアゴラ劇場で受付の手伝いや物販などをしていたんですけど、青年団のスタッフさんのお客さんに対する声かけがすごかったです。当日券などのチケットはどこで半券を切るのか、という案内や、途中休憩がないから今のうちにトイレに行ってください、という声かけのタイミングなどがとてもスムーズでした。青年団のスタッフさんたちのように、ノトススタジオでもお客さんにちゃんと伝えられるようにしたいと思いました。
今回の経験を通して、劇場のあり方について知りたい、もっと他の文化に触れたい、と思うようになりました。今まで国際交流や外国の文化などにそんなに興味なかったんですけど、インターンに行く前と行った後で私の気持ちは大きく変わりました。
私は卒業後、演劇コースでのご縁もあり、今回インターンに行かせてもらった青年団に入ります。そこで、これからも演劇に携わり、制作をやっていきたいと思います。

インターンを控えた後輩へアドバイスやメッセージなどあればお願いします。

――私にとって、インターンに行ったこの2ヶ月間は本当に良い経験になりましたし、とても充実していました。私は今まで制作のことしか知らなくて、今回他の音響や照明についても知りたいと思ったので、照明とか音響とか舞台のことを知っている人も、制作のことを知っていた方が、もっと楽しくなると思います。私はずっと、制作をやりたい、と思ってやってきました。だから、これがやりたい! という強い気持ちが大事だと思います。
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Toyooka Art Season 2016参加事業/青年団国際演劇交流プロジェクト2016
『MONTAGNE/山』
青年団HPより