『出会いとつながり』

社会学部(演劇コース) 田中良季くん
期間:7月~10月
場所:栗林公園 商工奨励館
活動内容:瀬戸内国際芸術祭2016 指輪ホテル「讃岐の晩餐会」出演

●参加しようと思ったきっかけは何ですか。
――大学1年生の時、非常勤講師のカミイケタクヤさんに「美術を手伝ってくれない?」と声をかけられて、瀬戸内国際芸術祭2013の直島での指輪ホテルの作品に一ヶ月間お手伝いとして参加しました。木を切ったり、海を泳いで碇を下ろしたり、色々と手伝いをさせてもらいました。海が舞台だったんですけど、海の上に電話BOXを置いたり、船が来たりして、すごい技術だなぁと思って、自分の中ですごく新しかったです。それがすごく面白くて、指輪ホテルの世界観も不思議でした。今回、指輪ホテルが出演者を募集していると聞いて、これも何かの縁だろうなと思って、3年越しに今度は役者として参加したいなと思いました。

●「讃岐の晩餐会」での役は何でしたか。
――僕は旅人の役で、僕の旅人視点から言うと、讃岐の晩餐会はどこにあるんだろうということから始まって、山の向こうから来る人間に化けている一族の行列と出会います。そして、讃岐の晩餐会に連れて行ってもらうことになって、ついて行くんですけど、八咫烏のお父さんが山からのお告げで今日は神様が交代する日で次の神様は自分の奥さんだと知って、ハイエナのお母さんは次の神として山にいかなければならなくなります。一族みんなお母さんについていきたがるんですけど、山について行ってはいけないので、お父さんに頼まれて旅人が一緒に山へ行き、旅をして、旅人は最後に讃岐の晩餐会へ戻ってきてご飯を食べる、という流れで物語は終わり、お客さんをお食事へと案内します。旅を終えた人が食べに来るのが讃岐の晩餐、という感じです。
旅人を演じる時に、自分の中のキャラクターというか、旅人の役というか、はっきりさせる部分ははっきりさせておこうと思っていました。でも、話が曖昧な部分は、各々の解釈の仕方もあるので、曖昧なままで演じました。旅人はおっちょこちょいで、活発であったり、お調子者であったり、作中では「ひょうげな」という表現が使われていました。僕自身、お調子者なところがありますけど、やっぱりちょっとコミカルに、オーバーにアクションしたりしていました。

●「讃岐の晩餐会」に出演してみてどうでしたか。指輪ホテル「讃岐の晩餐会」
――前回参加した時もなんですけど、やっぱり野外公演は天候に左右されます。野外は声が反響して響かないので、できるだけ大きく喋って全員に聞こえるように発声にはけっこう気をつけました。季節の変わり目だったり、気温だったりで、栗林公園での感じ方が全然違っていました。同じ作品ではあるんですけど、山から煙玉で煙を出して、それをお客さんと一緒に発見して「見つけた!」というシーンでは、その煙が見えるか見えないかで台詞が変わるので、毎回緊張しました。それに、毎回お客さんは当然変わるので移動の時も、お客さんの流れ方が違っていました。人の関心の向き方だと思うんですけど、真っ直ぐ来る人は演者の方たちに目がいって案内されていて、バラバラと歩く人たちは栗林公園の自然とかそういうものに目を向けて歩いていたのかなと思います。演技としては変わりないんですけど、お客さんに左右されるというか、お客さんに同調するというか、お客さんと作り上げるものが毎回違いました。
7月から10月の公演期間で、10月に久しぶりに同じ「讃岐の晩餐会」の舞台に立った時は、戻ってこられた、という嬉しい気持ちがありました。旅人の役は山にハイエナの奥さんと一緒に行くんですけど、色んなところを旅して、最後に「また讃岐の晩餐会に食べに行く」というような台詞があって、僕自身「讃岐の晩餐会」に帰ってきた時は、旅人のように他の舞台に参加したことで色んなものを見て、そしてまた「讃岐の晩餐会」に帰ってきたので、役の気持ちがよく分かりました。

●新しい発見や学びはありましたか。
――野外で、自然の中でやっていると山がどっしり構えていて自分が未熟者に思えてきたり、夏は暑いし秋になると風は冷たいしと、こんなにもろに環境に影響を受ける舞台は初めてで、こういう風になるんだ、というのは発見でした。夏に咲いていた花が秋には枯れていたり、陽射しの強い夏から秋の物悲しい雰囲気に変わっていったりと季節の変化も感じました。最後に歌う歌が秋の季節に合ってしんみり聞こえるようになってきて、同じ歌でも季節が変われば感じ方が違うんだなと思いました。
また、プロでやっている方の演技の仕方には人それぞれ差があるんですけど、差があって当たり前で、差があっていいんだなと感じました。声が通っている人にはどうやっているのか聞いたり、ダンサーの方とかにはどういう経緯でダンサーになったのかとか、プロの方と出会えて、そういう話ができたことは自分にとって大きな学びでした。やっていることは東京でも大阪でも変わらなくて、地方で活動している方たちの力をすごく感じました。だから、どこで続けてもずっと活動していけるんだなと思いました。
僕自身については、この空間だったらどれくらいの声の大きさで話せばいいか、どういう風に声を出せば後ろのお客さんまで届くのか、といったことを前よりも考えるようになりました。どういう小さい声を出しても、まだすべてのお客さんまで届かせる技術が自分にはない、ということも分かりました。

●今回の公演での経験をこれからの将来にどう活かしていきたいですか。
――普段、室内でやる公演は風とかを感じません。今回、野外公演で実際に風を感じる中で演じたことで、室内公演で風を感じる台詞とか、音を感じる台詞とかを演じやすくなりました。車の音とか、クラクションの音とかが公演中に鳴っていたので、違う突発的な音とかにパッと向く演技にも使えるかなと思います。外でやることによって情報量が多かったので、様々な状況をすごく想像しやすくなりました。
それに、大学外の公演に参加することによって、新しいつながりが広がっていくのは嬉しかったです。

●演劇コースで学んでいることはどう活かされていると思いますか。
――役者はその公演の舞台の中で、自分がどういう気持ちでその瞬間を歩いていたりお客さんを呼んでいるのかとか、ひとつの出来事をどう見ているのかとか、状況を理解していきます。普段の会話だったら状況理解はしないし台本も存在しません。それをどうやって自分の中で処理していくのか、こういう状況だからこういう感じかな、ということを台本をもらった時に探れるようになりました。こういうことは高校を卒業して、大学に入って1年生の時とかはなんとなくやっていただけだったんですけど、それをもう少し自分の経験に近づけることができたと思います。「でも」とか「だけど」とか、こういう言葉って気持ちが切り替わってるんだろうなとか、「あっ!」とか気付く時もどういう発見の仕方なのかとか、そういう表現を自分の中の経験から探り出していけるようになりました。これは、演劇コースで色んな公演に立つ中で、先輩とかプロの方に聞いたり、演劇WSなどを通してためになったことだと思います。演劇WSでは、「あぁそういうことか」と思うこともあったり、「どういうことなんだろう」と疑問に感じたり、単純に「面白い」と思ったり、「自分だめだな」と反省したりして、様々なことを学んでいきました。やることを言われてやるんじゃなくて、やっぱりやっているうちに自分はこれをやっているけどこれをやっている自分に今何が起こっているんだろう、ということを考えたり、やってる最中やこうしたらどうなんだろう、と演劇WSをただ受けるだけじゃなくて自分で発見していったり、自分の考えをプラスしていくことがいいんだなと思いました。

●大学外の公演に参加したいと思っている後輩へアドバイスなどがあればお願いします。田中良季くん
――できるなら1年生とか2年生のうちからオーディションとか受けた方がいいんだろうなと思います。1年目はまだ未熟過ぎるとは思うんですけど、挑戦はして欲しいです。四国学院大学の演劇コースがどういうものか分かってくると思うので、そこで学んで、どんどんオーディションを受けて欲しいと思います。演劇コースで学んでいることや作業していることは、実際に現場で使えるものばかりだと思います。学んだことや自分が発見だと思ったことは紙に書くことも大切です。
外部の公演は、プロの方や地域でやっているアマチュアの方とか、良い経験を持っている方ばかりなので、練習方法とかを自分から質問してみてください。聞いていくだけでもつながりになって、それがまた違うつながりになることもあると思います。実際、僕も演劇コースや今回の公演のつながりで来年の4月、東京で舞台に立たせていただけることになりました。
是非、つながりを作ってください!

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瀬戸内国際芸術祭2016「讃岐の晩餐会」
特別名勝栗林公園で、指輪ホテルによるパフォーマンス鑑賞と、県産食材を使った食事を楽しむ、芸術祭の旅の締めくくりにふさわしい贅沢なツアーイベント。

物語は、讃岐の晩餐会を探す旅人が人に化けたとある一族の行列と出会うことから始まる。一族の当主は、山からのお告げで自分の妻が次の山の神になることを知り、ついていけない自分たちの代わりに旅人に山へついて行ってほしいと言う。そして、旅人は日本中、世界中を旅する。

指輪ホテル
指輪ホテルは、羊屋白玉が、劇作と演出、ときどき俳優をつとめる「作品の連続体」である。